手しごとの原点を見据えてきた稀有なマーケットが10年問い続けてきたこと
自身のミッドライフクライシスに向き合い、新たな挑戦へ
尾見さん自身は54歳。3人の子どもたちも独り立ちし、年齢的にはまさにミッドライフクライシスに陥りやすいと言われる時期。
「今まさに更年期障害真っ最中なので、わたしもミッドライフクライシスの一員です。これまではホットフラッシュだけでしたが、最近は気持ちがざわつくことがあって。でも、そこに意識を集中するのではなく、ちょっと見て、でも見ぬふりをして、温泉に行ったりマッサージに行ったり。鍼灸と漢方は続けながら、信頼している友人の「これが効く」というポジティブな提案には一度はのることにしています。そもそも何もかもが順調な人生なんてないと思うのです。人生は修業。そのために生まれてきたと思うようにしているので、いろいろあって当たり前。何事も、お、ついに来たかという感じで受け止めています。
子どもたちも全員成人しましたが、心配なことや辛いことはいまだにあって、そのたびにどうしても気持ちは揺れてしまいます。でも、仕事で忙しくしていると、そこに自分の思考も気持ちも割けないし、忙しくしているなかでブレイクスルーのきっかけみたいなものが訪れるんですよね。
『TRACING THE ROOTS』に限らず、それぞれの事業が大変ですが、頑張ったら頑張った分だけ、直接ではないにしても思いがけないところからお返しがもらえるような気はしています。『TRACING THE ROOTS』は、わたしにとって大切なイベントで得難い経験。ものすごく成長させてもらったと思っていますが、執着はしません。常に新しいことに挑戦していたいんです」
これから先のマザーディクショナリーの活動も見逃せませんが、まずは最後の「TRACING THE ROOTS」にぜひ足を運び、自分なりの視点で見て、自分なりの感触で触れてみて、何かを感じてみてはいかがでしょうか。
[*1] 1989年創刊。さまざまなアーティストやクリエイターらを起用、東京のカルチャーシーンをビビッドに伝える、当時としては画期的なフリーペーパーだった。現在は『freedom dictionary』となり、219号が最新(210号より有料化)。 [*2] インドのキルトやモロッコのベニワレンなど、インテリアを飾るテキスタイルアイテムを数多く扱い、日本中の布好きが集まる人気ショップ。大阪にもショップがあり、博多では、アフリカやインド、アジアンなどで買い付けた民芸品やベルギーやフランスのアンティーク雑貨や自然物のオブジェなどを扱う「モアライト」、世界のかごを扱う「1834」も手掛ける。