大阪国際女子マラソンが新型コロナ禍による異例の周回コースに変更で16年ぶりに日本新記録が出る?!
1周2.8kmの周回コースは楕円形に近く大きなトラックというイメージ。内側(左側)が最短コースとなるが、周回遅れの選手が邪魔になるだろう。また今回は一般市民の公園内への立ち入り自粛を求めている。ランナーにとって大きなパワーとなる声援がないのは、終盤の走りに影響が出るかもしれない。 記録を狙うという意味ではデメリットよりもメリットの方が大きい。公道を使わずにクローズドな空間で行ったレースでいうと、昨年10月の箱根駅伝予選会がある。気象条件に恵まれたこともあり、記録は過去最高水準となった。昨年10月のロンドンマラソンも1周2.15kmの周回コースで実施されている。 非公認レースになるが、2時間1分39秒の世界記録を保持するエリウド・キプチョゲ(ケニア)が“2時間切り”を目指した「BREAKING2」と「INEOS 1:59チャレンジ」も周回コースでの挑戦だった。「BREAKING2」は1.5マイル(約2.4km)のサーキットを17周するコースで2時間0分25秒。「INEOS 1:59チャレンジ」は全長9.6km(4.3kmの直線を往復)の周回を4周ちょっとするコースで1時間59分40秒という驚異的なタイムを叩き出している。 もともと大阪国際女子マラソンは高低差約9mのフラットコースだが、今回の周回コースは高低差約5m。アップダウンの少ない道は記録挑戦の追い風になるだろう。 さらに今回はコロナ禍で海外勢を招待できないため「男女混合レース」になることがプラスに作用するはずだ。ペースメーカーは川内優輝(あいおいニッセイ同和損害保険)、田中飛鳥(ひらまつ病院)らを含む男子選手6人が務める。川内は2時間8分台の自己ベストを持ち2人ともマラソンのキャリアは豊富にある。 川内は「15年前から止まったままの時計を動かして、現状を打破する、という強い意志を持った選手・指導者・大会関係者・ボランティアのみなさん、そして、それを期待するテレビの前の視聴者のみなさんと共に、ペースメーカーとして、その想いを全力でアシストしたいと思います」と頼もしいコメントを発表している。 高橋尚子、渋井陽子、野口みずきが2時間20分を切った“サブ20”は男女混合レースのベルリンマラソンで記録されたもの。いずれも終盤まで男子選手のアシストを受けている。通常ペースメーカーは30kmで離脱するが、今回は状況に応じて男子選手がギリギリまでレースを引っ張る可能性があるという。 24歳の前田と23歳の一山がどこまで食らいつくことができるのか。特に一山は昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンで2時間20分29秒、同12月の日本選手権10000mで31分11秒56の自己ベストをマークしている。サブ20、そして日本記録(2時間19分12秒)更新の期待感は十分にある。コロナ禍で“新様式”となる大阪国際女子が日本女子マラソンの歴史を塗り替えるかもしれない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)