住宅街の家づくりで最も悩む、プライバシーと開放感の両立。それを見事に解決した建築家のアイデア&実例に注目!
住宅街の家づくりにおいて永遠のテーマともいえるのが、プライバシーを確保しながら開放感も得たいという、対極的な願いをいかに叶えるかということです。 【写真で見る】吹き抜けに中庭、煙突形の天窓など、工夫を満載した住宅密集地の家の全貌をチェック! 外部には閉じつつ内側に開く設計手法は、これまでも多くの建築家が挑戦してきました。 今回の事例では、土地形状をヒントにいくつもの仕掛けを展開。都市型住宅の可能性を広げる新たな答えが示されています。
小高い丘を背景にした閑静な住宅街。公園や教育機関が集まる穏やかな街ではあるものの、計画地は駅に近い住宅密集地。この敷地に家を建てることになったSさんは、開放的な広いリビングルームを希望しつつ、プライバシーやセキュリティも重視。両立しにくい要望をどうまとめるかが最大の課題となりました。
着目したのは敷地の地形
設計を手掛けた建築家の鈴木崇真さんがまず糸口としたのが、丘の麓の緩やかな傾斜地であること。フラットな大空間で広さを演出するのではなく、地形を生かして床レベルの異なる小さなボックス型の建物をずらして配置。視線がさまざまな方向に抜け、居場所によって景色が変わることで心象的に広がりを感じさせることを試みました。
見える風景と距離感の調整で、広さと開放感を獲得できる
「物理的な広さと体感的な広さは別ですよね。20畳で広いと思うこともあれば30畳でも物足りないこともある。 ここのように高低差があって環境的に制約のある土地ならば、小粒な箱を連ねて視線をあちこちに飛ばし、空間のつながりを設けることで豊かな広さを獲得できるのではないかと考えました」
ガレージと中庭をつなげることで生まれたメリット
小さな箱を配置するうえでキーとなったのが、ビルトインガレージから続く中庭の存在。道路から見えない中庭を介してリビングを設けることで、プライバシーとセキュリティを確保しました。 「ガレージってスペースを取る割に日々の生活では自由度の低い場所ですよね。でも背後の壁を取り払うだけで庭とつながり、さらにリビングにつなげることで道路から通り土間のようになり、都市とのバッファーゾーンになる。住み手の意思で開閉できる庭があるだけで暮らしの自由度が上がると考えました」