住宅街の家づくりで最も悩む、プライバシーと開放感の両立。それを見事に解決した建築家のアイデア&実例に注目!
家のなかの”公共の場”が個室よりも快適な空間に
小学生と中学生のお子さん2人を育てているSさんは、子供たちが個室にこもらず家族が一緒に過ごせるような間取りをオーダー。 鈴木さんからの回答は、家の中に“公共の場”を用意するという考え方です。 「寝室は個人のプライバシーが保たれる閉じた空間ですが、一歩出たところのセカンドリビングやライブラリーはパブリックゾーン。個室から出て家族同士がコミュニケーションを取る小道のような場所を意識しています。 特にこの家はトップライトから入る光が時間や季節によって変わるので、その変化が居場所の在り方を提示してくれると考えました。いろいろな居場所があると、人は考えもしなかった過ごし方をしてくれるのではないかと」
採光と空調。自然の心地よさを取り入れるアイデア
その光のデザインは空調の工夫とも連動しています。当初Sさんは全館空調システムを要望していましたが、コストと効果のバランスに課題もありました。 そこで考えたのが、5つの小さな吹き抜け、煙突状のトップライトと小窓で生じるドラフトを利用したパッシブな空調システムです。 「今の時代、高い断熱性能は必須ですが、自然と共存してきた日本人の価値観も含めて、気候のいい中間期だけでも自然エネルギーをうまく取り入れて快適性を得るという回答もあるんじゃないかと思います」 結果的に5つの煙突屋根が生まれ、建築の特徴的なファサードデザインにもつながっています。
戸惑いの先にあったのは理解と納得!
これらの提案を受けた住み手のSさんは当初、驚きと多少の戸惑いがありました。 「建築家と家を建てるのは初めてだったので、思い切った提案に“ここが本当に自分たちの家になるの?”という感覚はありました。でも、ガレージや広いリビング、趣味の部屋、家族の気配を感じる間取りといったオーダーはすべて満たしていて非の打ち所がない。 吹き抜けが多いので温熱環境などの心配も多少ありましたけど、丁寧に説明してくれたので鈴木さんの計算し尽くされたテーマや意味があることを理解でき、納得感がありました」