再挑戦実る H3ロケット2号機打ち上げ成功、宇宙開発利用の新エースに
失敗受け、大型衛星搭載は見送り
1号機の失敗を受け、政府やJAXAは2号機の計画を大幅に見直した。 H3の機体構成には、1段エンジン(LE9)や固体補助ロケットブースターの基数などによるバリエーションがある。変更前の2号機は、1段エンジン3基、ブースターなしという最小構成とし、地球観測衛星「だいち4号」を搭載する計画だった。これを改め、1号機と全く同じ1段エンジン2基、ブースター2基とした。1号機の飛行データを最大限に活用でき、またこの構成が幅広い衛星に対応できるためだ。 仮に打ち上げに失敗しても大型衛星を再び失わないよう、だいち4号の搭載は見送り、代わりに金属製のダミーの重りにした。一方で、H3の飛行実証という2号機の目的に影響しない範囲で利用の機会を設けることとし、小型衛星2基を“失敗時の補償なし”の条件で無償で相乗りさせた。小型衛星2基とそれらをロケットに載せるための構造物、重り(約2.6トン)を足した重さは、だいち3号(約3トン)とほぼ同じにした。
基幹ロケットでは、イプシロンの最終6号機も2022年10月、打ち上げに失敗。さらに昨年7月には、開発中の改良型「イプシロンS」2段機体の燃焼試験中に爆発が発生している。今回、H3がようやく成功したことで、基幹ロケット開発が立ち直りの端緒をつかんだものと信じたい。
ロケット開発の苦闘、欧米でも
大型ロケット開発に苦しむのは、日本だけではない。欧州では、世界の商業打ち上げ市場を牽引(けんいん)してきた「アリアン5」が昨年7月に運用を終了。だが、2020年の初打ち上げを予定していた後継機「アリアン6」が延期を繰り返し、今夏へとずれ込んだという。設計変更やコロナ禍が影響し、エンジンの燃焼試験にも時間がかかるなどしたためだ。 米国でも「アトラス5」などを運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の「バルカン」が、先月8日にようやく初打ち上げを果たした。アトラス5のエンジンはロシア製だが依存脱却を図り、バルカンでは米ブルーオリジン社製を採用したものの、開発に時間がかかった。 こうしたロケット開発の困難について、岡田氏は「大規模システムを作る作業であり、スケジュールを立てるのが難しい。(H3初打ち上げ)延期の原因となったLE9の開発では、初期の研究段階をもっとしっかりした方がよかったと思う。ただ最初にクリアできず、後から課題が見えてくることもある」と胸の内を明かす。