再挑戦実る H3ロケット2号機打ち上げ成功、宇宙開発利用の新エースに
1号機失敗、3つの原因シナリオ全てに対策
1号機は昨年3月7日に打ち上げられたものの、2段エンジンに着火できず失敗。搭載した地球観測衛星「だいち3号」を喪失した。原因は2段エンジンの電気系統の異常。22年ぶりの新大型ロケットはデビューからつまずき、日本の宇宙開発利用に深刻な打撃となった。
JAXAや三菱重工業などが原因の究明を進め、異常の発生シナリオを(1)エンジンの着火装置でショートが発生した、(2)着火装置への通電で過電流が発生した、(3)計算機からの指示を受けてエンジン周りのさまざまな制御をする装置の2系統のうち一方で過電流が起き、トラブルに備えたもう一方にまで波及した――の3通りにまで絞り込んだ。昨年10月、文部科学省の宇宙開発利用部会がこうした内容の報告書を決定した。報告書は失敗の背景に、長年使ってきた装置の実績を重視したことや、対策や確認の不足があったとも指摘している。 政府やJAXAは原因を1つにまで絞り込むのを待たず、H3の早期運用を優先すべきだと判断。2号機では3つのシナリオ全てに再発防止を施した。具体的には(1)着火装置の部品の絶縁や検査の強化、(2)トランジスタに加わる電圧が定格内となるよう部品を選ぶ、(3)原因の可能性がある部品「定電圧ダイオード」はなくても問題ないため、回路から削除する――ことを反映している。 なお、原因となった疑いがあり共通する要素について、H2Aにも同じ対策を施しており、昨年9月と先月12日に打ち上げが連続成功している。
性能向上と低コスト化の両立目指す
H3はH2Aと、2020年に運用を終了した強化型「H2B」の後継機。2段式の液体燃料ロケットで、1、2号機の全長は57メートル、衛星を除く重さ422トン。H3の最大能力はH2Bの6トンを上回る、6.5トン以上(静止遷移軌道、赤道での打ち上げに換算)。JAXAと三菱重工業が共同開発し、これまでの開発費は2197億円だ。 1段エンジンを新開発したほか、宇宙専用部品ではなく自動車などに使われる民生品を多用するといった工夫で、効率化を進めた。H2Aの基本型で約100億円とされる、打ち上げ費用の半減を目指した。性能向上と低コスト化を両立し、政府の衛星のほか近年、大型化が進んだ商業衛星の搭載を可能とした。科学目的の探査機、国際宇宙ステーション(ISS)や建設予定の月周回基地へ向かう物資補給機にも対応する。