【遠藤航・分析コラム】リバプールに必要な理由。クロップ監督ラストマッチで示した、成長の証
プレミアリーグ最終節、リバプール対ウォルバーハンプトンが現地時間19日に行われ、2-0でホームチームが勝利を収めた。遠藤航はユルゲン・クロップ監督のラストマッチでもフル出場。その中で恩師に自らの成長した姿をみせている。(文:安洋一郎) 遠藤航がフル出場!リバプールvsウォルバーハンプトン ハイライト
●リバプールがクロップ監督のラストマッチを勝利で飾る 一つの歴史が終わりを告げた。 プレミアリーグ最終節ウォルバーハンプトン戦が、今シーズン限りでリバプールの監督を退任するユルゲン・クロップのラストマッチとなっている。 リバプールはすでに3位でのフィニッシュが決まっていることから消化試合ではあったものの、低迷期を迎えていたクラブに数々のタイトルをもたらした名将に感謝を伝えようと、多くのサポーターがアンフィールドに訪れた。 キックオフ前からエモーショナルな空気が漂った試合は28分にウルブスDFネルソン・セメドが一発退場となってから一気に動き出す。1人少ない相手チームに対して猛攻を仕掛けたリバプールは、36本のシュートを放ち試合を完全に支配。ウルブスGKジョゼ・サーが12本のセーブを披露したことで、スコアこそ2-0で終わったが、アグレッシブで攻撃的なクロップ監督のラストマッチに相応しい試合となった。 このリバプールの歴史に残るであろうメモリアルな試合に今季から加入した遠藤航も出場している。日本代表MFは恩師に成長した姿をみせることができたのだろうか。 ●遠藤航の重要性が再確認された理由 いつも通り[4-3-3]の中盤の底で先発出場した遠藤は「フィルター役」と「後方からの攻撃陣のサポート」の両タスクを完璧にこなしてみせた。 直近のリバプールは第36節トッテナム戦と第37節アストン・ヴィラ戦で、遠藤をベンチに下げてからピッチにフィルターとなる選手が不在に。その結果、中盤の強度が落ちて2失点ずつ喫している。 この2試合で改めて遠藤の重要性が再認識されたことだろう。今のリバプールには日本代表MFのような守備の局面で強みを発揮する選手がいないのだ。19歳のステファン・バイチェティッチは長期離脱明けで、まだコンディションが万全ではなく、先述したトッテナム戦では苦戦する姿も見られた。 この2試合での反省を踏まえて臨んだ今節、遠藤はフル出場を果たし、90分を通して相手のカウンターのチャンスの芽を多く摘んだ。自陣では的確なカバーと味方選手との連係で、裏へのスルーパスや相手の球の出どころを潰し、敵陣では積極果敢なプレスでカウンターの起点を封じている。 その中でリバプール加入当初と比較をすると、確かな成長が伝わるプレーがあった。 ●遠藤航が1年間で成長をみせたプレーとは リバプールに限らずアンカーのポジションの選手には、いかなる状況でも守備時に相手の攻撃を止めることが求められており、例えファウルであろうとカウンターの起点を潰すことが重要である。 加入当初の遠藤は前所属のシュツットガルトがダブルボランチだったこともあるのか、守備範囲や求められるタスクが異なるため、この役割をこなすことにやや苦戦をしていた。初先発となった第3節ニューカッスル戦では、サンドロ・トナーリとブルーノ・ギマランイスに対して前に潰しに行ったが、ターンや強引なフィジカルで剥がされていた。 このニューカッスル戦で前に相手を潰しにいくプレーは試合を通して3つあったが、いずれもファウルですら止めることができなかった。遠藤としては後ろに守備力の高いDFがいたこともありファウル覚悟で止めに行ったと思われるが、それでもかわされてしまっていたのだ。 それから約1シーズンが経過した最終節ウルブス戦では確かな成長をみせている。ニューカッスル戦と同じように相手の球の出どころにパスコースを消しながらプレスをかけて、ボールを奪い切る、もしくはファウルでカウンターを阻止していた。 この試合で遠藤は3つのファウルを与えているが、いずれも敵陣でのプレーだったため、セットプレーなどからピンチを招いていない。むしろ日本代表MFが相手の攻撃を完璧に潰したことから、リバプールは試合を通してほとんどカウンターを受ける機会がなく、オープンプレーからゴールを脅かされる場面は皆無に近かった。 恩師クロップ監督のラストマッチでも確かな成長をみせた遠藤。来シーズンからは監督やコーチングスタッフが入れ替わるため、チームのサッカーのスタイルが変わるかもしれないが、まずは1年間主力としてプレミアリーグを戦い抜いたのは彼のキャリアで大きな財産となったことだろう。 来シーズンの活躍にも大いに期待していいのではないだろうか。 (文:安洋一郎)
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