「インプラント」は奥歯よりも前歯の方が難しい? その理由と治療時の注意点を歯科医が解説!
前歯をインプラントにするメリット・デメリット
編集部: 自分の前歯を失った場合、インプラントを選択するメリットを教えてください。 岡田先生: 一番のメリットは、残っている自分の歯を削らずに済む点です。また、噛み合わせに関してもブリッジや入れ歯の場合は隣在する歯に負担がかかってしまいますが、インプラントはほかの歯に負担をかけることがありません。残っている自身の歯にダメージを与えることなく、見た目や噛み合わせを回復できるのがインプラントの最大のメリットだと思います。 編集部: 前歯をインプラントにするデメリットやリスクもあるのでしょうか? 岡田先生: 誤った方法や術式で治療してしまうと、インプラントが本来あるべき位置からズレてしまったり、治療後にインプラント周囲炎を起こしやすくなったりするため、注意が必要です。前歯のインプラントに関しては治療計画をしっかり立て、治療をはじめる前に患者さんに提示することが大切だと思います。 編集部: 難易度の高い前歯のインプラントは、やはり費用も奥歯より高くなるのでしょうか? 岡田先生: そうですね。前歯のインプラントは術式が難しいことに加えて、上部構造を作る歯科技工士にも高い技術が要求されます。ほかの歯を削ることなく自然で美しい見た目に仕上げることを考えれば、歯科医師と歯科技工士のいずれにも技術料がかかってしまうことはご理解いただきたいと思います。
難易度の高い前歯のインプラントを成功させるポイント
編集部: 奥歯よりも難しいと言われる前歯のインプラントは、どのような点に注意が必要でしょうか? 岡田先生: 審美的な要求度の高い前歯に関しては、歯を抜く前にどの治療法を選択するのか、どのように治療を進めていくのかを歯科医とよく相談することが大切です。先述のように、前歯の場合は歯を抜いてから治療法をあれこれ考えてしまうと、その間にも骨の吸収がどんどん進んでしまいます。そのため、前歯をインプラントにする場合は抜歯と同時に骨を温存する処置が必要ですし、それを先におこなっておけば小さな骨造成で済むことは知っておいた方がいいでしょう。 編集部: 前歯の場合は歯を抜いてからではなく、抜く前にある程度の治療方針を立てておくことが重要なのですね。 岡田先生: はい。したがって、歯科医院を選ぶ際も治療計画をしっかり明示してくれることや、過去にどのようなケースがあるのかを見せてくれることが大切だと思います。とくに、前歯のインプラントに関しては治療後10年が経過しても同じ状態を維持できているかが、非常に重要なポイントとなります。治療直後は綺麗でも「数年後に歯ぐきが下がって見た目が悪くなる」ということがないように、過去の症例が現時点でどのように維持されているかも確認しておきましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 岡田先生: 前歯をインプラントにするか・しないかで悩んでいる人は、ぜひ「歯を削らない」というメリットをよく考えていただきたいと思います。とくに、外傷(ケガ)で前歯を1本だけ失った場合、残っている健康な歯を守るうえでインプラントは非常にメリットの大きい治療と言えるでしょう。一方で、審美面のインプラントについては歯科医師をはじめ、歯科技工士や歯科衛生士にも高いスキルが要求されます。そのため、奥歯と比べて多少費用がかかってしまうことはご理解いただけると幸いです。