W杯最終予選で中国を2-0で撃破した森保Jが手にした収穫とは?
何よりも大きかったのは、谷口と板倉をも呪縛から解き放った点だ。 精神的な支柱も担う吉田、昨夏に移籍した名門アーセナルでさらに成長している冨安を最終予選で初めて同時に欠く今シリーズ。王者・川崎で濃密なキャリアを刻みながら、中国戦が国際Aマッチ6試合目だった谷口が偽らざる思いを明かす。 「メディアで『大丈夫か』と不安を報じられましたが、準備している選手たちは全員がその座を狙っている。そこでチャンスをもらった選手が、しっかりとパフォーマンスを発揮するのが代表だと思うし、そうして新たな競争が生まれていけばいい」 中国戦が25歳の誕生日だった板倉は、公式戦出場こそ少なかったものの、フロンターレU-18から昇格した2015シーズンからの3年間で谷口と同じ時間を共有した。 昨夏に加入したブンデスリーガ2部のシャルケで、センターバックとして高い評価を受けながら、最終予選では4試合続けてベンチで吉田と冨安のプレーを見届けた。ようやく手にしたチャンスを、こんな思いとともに受け止めていた。 「センターバック不在で見ている人は多くの不安があったと思いますけど、自分としてはここでやらなければ終わりだ、という気持ちで臨みました」 前半をシュートなしで終えた中国は、ロングボールを多用してきた。1点差ならば不測の事態も起こりうるが、2点差になれば日本に精神的な余裕が生まれる。ブラジルから帰化したFWアランを投入してきた後半も、最後まで決定的なチャンスを作らせなかった。 そして、勝利を介して手にした手応えは、引き続き吉田と冨安を欠いた陣容で臨む、サウジアラビアとの大一番へとつながっていく。 日本時間28日未明にホームで行われた一戦で、サウジアラビアは1-0でオマーンを撃破。6勝1分けと無敗をキープし、勝ち点を19に伸ばして来日する。 2月1日の次節で勝利すれば、3月の残り2試合を待たずして、2大会連続6度目のワールドカップ出場を決められる。日本としては目の前でサウジアラビアが喜ぶ姿を見たくないし、何よりも10月8日の第3節で敗れた悔しさを全員が忘れていない。 「自分がゴールを決めたいのもありますけど、何よりも勝つことを優先したい」 3ゴール1アシストと、日本の総得点7のうち「4」に絡んでいる伊東がリベンジを誓った。ただ、力の差があった中国からさらなる追加点を奪えなかったことで、得失点差ではオーストラリアの「+9」に比べて「+4」と大差をつけられてしまった。 3月24日に敵地でオーストラリアとの直接対決が待つなかで、最終的に勝ち点で並ぶ事態を避けるためにも、サウジアラビアに連敗を喫することは許されない。移動なしで調整できる28日以降の4日間で、中国戦で得た収穫を新たな力に変えていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)