伝統的資産ではなく、なぜ「オルタナティブ投資」なのか?【資産運用のプロが解説】
株式ロング・ショートの世界
サンドラー社は20年間以上ヘッジファンド業界で生き残っており、「長く活躍している」理由を知ることで、運用する側からの視点としてご参考にしていただけるかもしれません。 ヘッジファンド業界では半減期(顧客の資産をお預かりして運用会社を始めてはみたものの、成績不振や何らかの事情で運用会社の数が半分になってしまう期間は数年間と言われています。2000年代初頭には2年ほどと言われた時期もありました。 先ほどのイェール大学基金のように、大手のスポンサー(アセット・オーナー)がヘッジファンドへの投資を開始して以来、リターンのサステナビリティ、運用プロセスの説明責任、再現性の証明など通常のロング・オンリー・マネジャーに対するのと同じような厳しさで評価が行われるようになるにつれて、マネジャー側でもリスク管理を強化し、運用プロセスの一つ一つについて説明を行うようになってきています。 そうしなければ、年金基金をはじめ、いわゆる機関投資家と言われるアセット・オーナーから投資を促すことは不可能になってきたという資産運用業界全体の流れがあります(投資家にとってみると当たり前のことでブラックボックスに投資していては安心できません)。 この戦略における「ロング」の部分は理解が容易だと思われます。株式投資家は資金を投じて企業に投資することが通常です。期待される果実は株式の値上がりと配当です。そもそも企業がうまく経営していけば時間の経過とともにキャッシュフロー、利益を増やしてくれる期待がありますので、株式投資と言えば通常ロング・バイアス(買い持ち)があるものです。 一方「ショート」は直観的には理解しにくいものです。端的に申し上げますと、例えば国内株の世界では信用取引が認められていますが、同様のことを先進国の取引所や規制当局は認めています。ショートする場合、証券会社を経由して株式を借り、市場で売却します。想定通り株価が下がれば、それがリターンとなります。期日内に買い戻しを行い、借りていた株式を返済します。借入期間に応じた金利相当額を「品貸料」として証券会社経由で返済します。 加えて、米国の場合、個別銘柄を含むオプション市場が発達していますので、個別銘柄のオプションも良く利用されています。プットの買い、コールの売り等を行うには、その過程で技術的に煩瑣なことが生じることもあります(状況によって貸株が禁止になる、品貸料が突然上がる等)。 ロング・ショート戦略の運用目標は必然的に絶対リターンです。ロングからもショートからも超過収益を獲得することを狙うわけですが株式市場全体に起因するリターン(ベータ、β)は意図して取る場合と取らない手法(マーケット・ニュートラル)とがあります。 弊社が採用し、ファンドオブファンズ(FoFs)で投資しているサンドラー社(Sandler Asset Management)の戦略、手法を簡単にご紹介しておきます。 ニューヨークにある同社のオフイスを訪問し、ポートフォリオ・マネジャー等との面談を含め、書類に表現されている運用プロセス等を仔細に確認いたしましたが、その前の段階で、何をチェックしていったのかを簡単にご紹介します。 事前に入手した目論見書、提案書によりますと、一つにはアナリスト、ポートフォリオ・マネジャーといった馴染みのある職種、役割りが存在し、人間の議論や判断で意思決定していること。二つ目には、過度にコンピューターに依存したプロセスでは無いため、ロング・オンリー(通常の伝統的な運用手法)の運用プロセスと余り変わりは無く、どこで付加価値が取れているのかが、事後的に理解しやすいこと等の要因を、過去の運用実績とともに評価いたしました。