「月々3万円」を”新NISA or 預貯金”に回した場合を比較シミュレーション。リスクにも注目
貯蓄ではなく積立投資をすることのリスク
シミュレーション上は積立投資の方が貯蓄より魅力的に見えますが、リスクもあります。 リスクを理解したうえで、自分に合った方法で資産形成を進めましょう。 ●損失が発生して損切りしてしまうリスク 投資は基本的にリスクを伴い、市場環境によっては損失が発生するリスクもあります。 NISAにおいては株式に投資する投資信託が人気ですが、株式は経済ショックなどが起こると大幅に下落するリスクがあります。 たとえばリーマン・ショックの局面では、アメリカの株式指数であるS&P500は2007年10月9日から2009年3月9日までの下落率が56.8%に達しました。 もしこのタイミングでS&P500と連動するインデックス投信を保有していたら、資産は一時半分以内に目減りしていた可能性が高いのです。 長期で投資すれば、一般に損益が安定する可能性が高いものの、実際にはこうした下落局面に損切りをして投資を辞めてしまう方が少なくありません。 長期で投資を続けるために、損失リスクを理解したうえで、ハイリスクな投資を避けてじっくりと取り組むことが大切です。 ●途中で換金がしづらいリスク 預金は、一般的にATMが営業している時間なら柔軟に引き出しが可能です。 定期預金では当初予定の金利がつかない場合がありますが、引き出し時に損失を出す心配はありません。(円預金の場合) 投資有価証券は、預金と比べるとすぐに換金ができない資産です。 急病やケガなどの急な出費時に、たとえ有価証券を持っていても現金が足りないと、支払いに困る恐れがあります。 また、現金が足りずに急遽証券を売却するときに損失が出ていると、意図せずに損切りとなる恐れもあります。
まとめ:余剰資金の確保を優先
月4万円の積み立てを行うと想定し、預貯金に回すケースと新NISAでの積立投資に回すケースで比較シミュレーションしました。 35年間投資を継続すると、35年間の総投資元本対比で倍以上に増やすことが可能です。 ただし、元本保証がないので損失が出る年が出てしまうリスクがあります。預金と比べるとすぐに換金ができない点も、デメリットとして認識しておく必要があるでしょう。 まずは、余剰資金の確保を優先したうえで、生活資金と緊急時に使用する資金を確保してから投資を検討し始めましょう。 一般に1か月の生活費の3~6か月程度は現預金として保有しておくのが適切です。 【編集部よりご参考】 今回は月々3万円でのシミュレーションを行いましたが、平均でどれほど「月々の収入から貯蓄」に回せているものなのでしょうか。 参考までに、年齢別の貯蓄割合をご紹介します。 【単身世帯の貯蓄割合】 40歳代 ・平均:14% ・5%未満:3.1% ・5~10%未満:8.8% ・10~15%未満:13.5% ・15~20%未満:6.2% ・20~25%未満:11.9% ・25~30%未満:1.6% ・30~35%未満:7.3% ・35%以上:12.4% ・貯蓄しなかった:35.2% 50歳代 ・平均:14% ・5%未満:5.8% ・5~10%未満:10.6% ・10~15%未満:14.2% ・15~20%未満:4.4% ・20~25%未満:8% ・25~30%未満:3.1% ・30~35%未満:7.1% ・35%以上:11.9% ・貯蓄しなかった:35% 60歳代 ・平均:10% ・5%未満:6% ・5~10%未満:9.2% ・10~15%未満:11.7% ・15~20%未満:2.5% ・20~25%未満:10.6% ・25~30%未満:1.4% ・30~35%未満:2.1% ・35%以上:7.1% ・貯蓄しなかった:49.3% 【二人以上世帯の貯蓄割合】 40歳代 ・平均:12% ・5%未満:8.3% ・5~10%未満:15.6% ・10~15%未満:22.1% ・15~20%未満:3.9% ・20~25%未満:11% ・25~30%未満:1.4% ・30~35%未満:5.7% ・35%以上:7.1% ・貯蓄しなかった:24.8% 50歳代 ・平均:12% ・5%未満:6.9% ・5~10%未満:15.7% ・10~15%未満:20.2% ・15~20%未満:5.2% ・20~25%未満:8.3% ・25~30%未満:1.7% ・30~35%未満:5.7% ・35%以上:8.1% ・貯蓄しなかった:28.1% 60歳代 ・平均:11% ・5%未満:5.3% ・5~10%未満:12.9% ・10~15%未満:16.2% ・15~20%未満:2.4% ・20~25%未満:11.0% ・25~30%未満:1.5% ・30~35%未満:4.8% ・35%以上:8.7% ・貯蓄しなかった:37.2%
参考資料
・金融庁「NISAを知る」 ・金融庁「つみたてシミュレーター」 ・金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」 ・金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
太田 彩子