冬季うつ病 食欲旺盛、体重増加、眠気 体験を漫画で発信する女性…「ダメ人間」と自己否定する感情も
目標は低めに設定
高田さんは、自分の体験を漫画に描いてブログで紹介している。「周囲に同じ状況の人がいなかったため、冬季うつ病の人と情報を共有したいという思いがありました」。すると、「同じ症状がある」などというメッセージが相次いで届き、一人じゃないという思いを強くできたという。 冬季うつ病の症状が出るようになり、14年がたった。「今は、体調が悪くなる前兆に気づくようになりました。無理をすると動けなくなってしまうため、1日にやり遂げるべき目標も低めに設定し、それで満足するようにしています」。病気の特性を理解しながら、冬季うつ病と付き合っている。
20~30歳代女性に多い
冬季うつ病について、精神科医でむさしクリニック(東京都小平市)院長の梶村尚史さんは、「冬になると日照時間が短くなり、セロトニンの分泌量が減ることが発症要因の一つと考えられています」と説明する。意欲低下や倦怠(けんたい)感が主な症状で、女性がなりやすく、20~30歳代で発症する人が多いという。
セロトニンの分泌を増やすには
症状の改善を図るには、セロトニンの分泌量を増やすような生活を送ることが大切だ。梶村さんは「朝起きたら太陽の光を浴びて、体を動かします。曇りの日でも、セロトニンの分泌を増やすのに十分な量の光があります」と強調する。 セロトニンは、心の状態を安定させる働きがあるほか、夜になると睡眠を促すホルモン「メラトニン」の材料になる。また、運動することで体に疲労感が蓄積し、夜の眠りにつながる。 食事は、「バランス良く」取る。肉や魚、牛乳・乳製品などには、セロトニンの材料となるトリプトファンが含まれている。また、トリプトファンが脳内に取り込まれる際には炭水化物が必要になる。さらに、セロトニンを作るためには、ビタミンB6が欠かせない。
ストレスをためない
冬季うつ病は、日中でも眠くなってしまうことが多いため、睡眠時間のコントロールも重要だ。梶村さんは、「適切な睡眠時間は諸説ありますが、15歳は8時間、25歳は7時間、45歳は6時間半、65歳は6時間と考えてよいと思います。睡眠時間が長くなると、深い眠りが少なくなって睡眠にメリハリがつかず、日中もずっと眠たい状態が続きます」と説明する。 日中、どうしても眠くなってしまったら、15分程度、昼寝をする。ただし、(1)横にはならない(2)午後3時以降はしない――といった工夫が必要だ。 生活習慣を見直しても症状が改善されなければ、薬物療法を行う。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬などを服用し、脳内でセロトニンの量を増やすようにする。 梶村さんは「ストレスをためないことも大切です。心身ともに不調だという場合は、例えば、大掃除などは年末年始にやろうとせず、体調が戻った春以降に行うといったことも考えてほしいと思います」と話している。(読売新聞メディア局 利根川昌紀)