日本バレーボール界に〝切り札〟投入 ティリ氏の男子代表監督就任に期待大
【ベテラン記者コラム】バレーボール男子日本代表の新しい監督に、SVリーグ男子・大阪Bの監督を務めているロラン・ティリ氏(61)が内定した。今季は大阪Bの監督を続け、契約が満了するシーズン終了をもって正式に代表監督に就任する。代表の契約は2028年ロサンゼルス五輪後のアジア選手権までだ。 日本バレーボール界にとっては〝いよいよ本命が登場した〟といったところだろう。 現役時代にフランス代表として活躍したティリ氏は、2012年に母国の代表監督に就くと、それまで低迷していたチームを、16年リオデジャネイロ大会で3大会ぶりの五輪出場に導いた。続く21年東京五輪ではフランス初の金メダルを獲得。20年からは、並行してパナソニック(現大阪B)の監督も務めていた。 一方、日本代表は16年に就任した中垣内祐一監督がフランス人のフィリップ・ブラン氏をコーチに招聘(しょうへい)。その指導の下、石川祐希(ペルージャ)や西田有志(大阪B)ら人材がそろったこともあって力を伸ばした。東京五輪後はブラン氏が監督に昇格。ネーションズリーグで23年に3位、そして今年は準優勝と、世界トップレベルに比肩するまでに育った。ただ今夏のパリ五輪では、準々決勝でイタリア相手にマッチポイントを握りながら逆転負けを喫し、目標としたメダルには届かなかった。 パリ五輪前にはブラン氏が任期満了で退任し、韓国リーグのチームで監督になることが決まっていた。ブラン氏の手腕は高く評価されており、契約を更新しなかった日本協会を批判する声は少なからずあった。だが協会は、ティリ氏を次の監督と見定めていたようだ。 パナソニックの監督に就任して以来、日本バレー界にはティリ氏の代表監督就任を待望する声があった。ブラン氏を否定するわけではないが、指導者としての違いは主要国際大会の優勝経験だ。ティリ氏は東京五輪のほかワールドリーグ(現ネーションズリーグ)で2度優勝しているが、ブラン氏は日本代表での24年ネーションズリーグを含め、最高で準優勝。ティリ氏は日本代表を、さらなる高みへ歩ませるための〝切り札〟なのだ。 そもそもティリ氏は日本に適している。国内バレー事情を熟知しているだけでなく、新渡戸稲造の『武士道』を愛読するなどもともと日本文化に関心が高い。