華麗なる初夏の妖精「山のツツジ三兄弟」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #35
華麗なる初夏の妖精「山のツツジ三兄弟」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #35
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します! 「今日は夏日でした。いやあ、暑かったですねえ」。そろそろお天気おねえさんが、毎日のようにこの話題を振り始めるころ。さて、ではいまごろの時期の山の花といったら? ミズバショウ→終わり、カキツバタ→まだイケル、ニッコウキスゲ→これから……。ととと、待った待った。なんか忘れてるでしょ? とそんな思いもあって今回あえてご紹介するのは、ツツジたち。だって、山に行ったら、ほぼ絶対出会うでしょ。そして見に行くなら、「いまでしょ」!
ところで、ツツジって難しくね?
とくに意識しなくても、森のなかを歩くと必ず見つかるツツジの仲間。で、気づくと意外と周りにいるのだけど、どれもこれもおなじ顔……。微妙な花色とお顔の違いこそあれど、なにやら難しい彼ら。で、ずばりツツジを見るときのポイントが、「毛」そして「雄しべ」なんですね。この写真は平地のコバノミツバツツジなんですが、雄しべが10本くらいあって、わっしゃわしゃ。このコを基準にして、山のツツジたち、ことにヤシオ一族を見ていくとしましょう!
一族のトップバッターは……
Data ムラサキヤシオ(ツツジ科) 一般的な花期:5~6月 おもな生育場所:山地~亜高山の林内や林縁部 撮影地:尾瀬沼へのトレイル(三平峠)。 山で見られるヤシオの代表としてまずご紹介したいのが、このムラサキヤシオ。先ほどのコバさんと比べると、雄しべが少ない! そう、赤字決算半額セール(! )の5本しかないのです。どうりで、花の周りがスッキリしてみえるワケですな。そして、チョウチョたちを呼び寄せる花びらのテンテン(=ガイドマーク)は健在。ラッパ型に開くツツジたちの“普段着”なので、これも押さえておきたいポイントですね。
ピンクレンジャー、でも名前はレッド
Data アカヤシオ(ツツジ科) 一般的な花期:4~5月 おもな生育場所:山地~亜高山の林内や林縁部 撮影地:御在所岳(8合目付近)。 ムラサキさんはわりに日本海側に多い印象。で、われらが本拠地、東海地方に多いのが、アカヤシオでしょうね。なんといってもその特徴は、「優雅」。ふんわりとしていて、雄しべが短くて(これでも10本あるけど)、つましい印象。まあ、要はゆるふわオトメ系なんですな。で、ピンクなのに名前はアカヤシオ。ただ、もっと西に行くとそっくりピンクことアケボノツツジがいるとか。その見分けポイントとなるのが……。