ひとり暮らし『東京はひと時の舞台、30代女性「仮暮らし」の部屋』 合わない婚活を止め「望む未来」をつかむまで
佐藤さんは家族に守られていた控えめな子ども時代から、さまざまな人々との出会いによって、内に秘めていた意欲が湧き上がっていった過程を振り返る。「田舎暮らしの自分からすると、都会で学んだり働いたりするのは冒険。思い切ってチャレンジした結果、いい人との出会いに恵まれたと思います」とのこと。 しかし、全てが順調だったわけではなく、佐藤さんも停滞期に悩む時期があった。その時期に起こった出来事やそこから湧き起こった感情が彼女を変え、現在のライフスタイルにたどり着くきっかけとなったそうだ。
■合わない婚活が「らしさ」を奪う 佐藤さんが現在の住まいに引っ越してきた理由は、婚活疲れと失恋だった。 「20代の後半ごろは多くの女性がそうかもしれないのですが、私も『30歳までには』と、結婚や子どもを持つことに焦る気持ちがありました。今も、自分の家庭を持ちたいという思いはあります。でもあの頃は、その気持ちが空回りしていたかもしれません。 転職をしたときの会社選びでも、家庭を持つ可能性を視野に入れていました。オーガニックコットンの会社では、とてもやりがいのある仕事をしていましたが、結婚後を考えたら、大きな会社で福利厚生を活用できる環境の方が子育てしやすいのかなと思って」
2社目となる転職先は大手広告代理店のネット広告会社。1社目の会社の規模は従業員60人ぐらいだったが、一気に1000人規模の会社の社員になった。 「最初の会社で自社ブランドのサイトやオンラインショップの管理もやっていたので、ネット関連企業で専門性を高めたい気持ちと、大会社ならではの福利厚生に魅力を感じて転職したのですが、思ったような仕事はできませんでした。 その会社は大きな会社ゆえに、担当するのはプロジェクトの一部分。さまざまな業務に携わることができた前職と比べると、仕事の手応えを感じにくかったのです」
結局その会社は2年弱で退職することになる。 「結婚をする前提でその会社に入ったものの、婚活は苦痛でした。アプリに登録したり、合コンをしたりといろいろやってみましたが、男性の望むような女性を演じるのに、疲れてしまって。 そのころ、婚活とは別で好きな人がいたのですが、彼は全く結婚する気がなかったので、そちらも出口が見えず。いろんな方向で、行き詰まっていたんですね」 そんなとき、佐藤さんは現在も働くブランディングデザインの会社のマネージャーポジションの募集を目にした。デザインの技能がなくてもクリエイティブな環境で働ける、マネージャーという職種に惹かれた。