介護リスク高める骨粗しょう症 ~10代から予防、中高年は検診を~
◇腰曲がるとQOL悪化
大谷医師によれば、骨粗しょう症に起因する骨折の中では椎体骨折が最も多い。この影響で腰が曲がってしまうと、①腰痛が出たり、長い距離の歩行が困難になったりする②食べた物が胃から食道に逆流し、胸焼けなどを感じる③見た目を気にして人前に出るのを嫌い、引きこもりや老人性うつになる―など、生活の質(QOL)の大幅な低下が懸念される。しかも「背骨が変形した高齢女性は入院リスクが高く、生存率が低いというデータまである」という。 さらに危惧されるのは、骨折によって要介護状態になってしまう事態だ。厚生労働省の調査では、介護が必要となった原因の1~3位は認知症、脳卒中、骨折・転倒。大谷医師は「認知症と脳卒中は予防が難しく、唯一予防できるのは骨折。骨折しないようにすれば、将来、要介護になる可能性を低くできる」と説明する。
◇予防の基本は食事と運動
発症を予防するにはどうしたらいいか。基本的な対策は食事と運動だ。食事ではカルシウムをしっかり取るようにする。牛乳・乳製品、小魚、大豆、緑黄色野菜などに多く含まれている。ビタミンDやビタミンK、タンパク質も大切で、魚、キノコ類、納豆、緑色野菜、肉、卵などで摂取できる。ビタミンDは紫外線を浴びると体内で合成されるので、短時間の日光浴も効果がある。 運動に関しては、ウオーキング、スクワット、片脚立ち、かかと上げ、腹筋、背筋、背中のストレッチなどが推奨されている。適度な刺激・負荷がかかる動きにより、筋肉や骨、体幹が強化される。これらは転倒防止にもつながる。 職場でも予防を支援する動きが出ている。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人グループは11月、勤務中の心身リフレッシュのために行うメニューの一つに、足踏み、スクワット、机・テーブルを使った腕立て伏せなどのエクササイズを加える。同グループの岡原伸太郎・統括産業医は「仕事の場でも高齢化が進んでいる。転倒した場合にただの打撲で済まず、骨折する人が多くなっている」と、予防の重要性を強調する。