火星移住計画を推進?マスク氏がトランプ政権に介入するワケ…ムダ削減から人事、外交までやりたい放題
■ 人類の火星移住計画の実現を目指す こうした強い影響力を次期大統領に発揮するマスク氏とはどのような人物なのでしょうか。 マスク氏は南アフリカ共和国出身で、米国の大学を卒業後、「X.com(エックスドットコム)」というオンライン銀行を立ち上げました。1998年、他社と合併してインターネット決済サービスのPayPal(ペイパル)社を創業し、同社のCEO(最高経営責任者)となります。その後、ペイパル社の売却資金を元手に2002年にはロケット開発などを行う宇宙企業「スペースX」社を立ち上げました。 マスク氏は人類の「火星移住計画」の実現を目指しています。地球の環境が劣化して人類が滅亡の危機にさらされることを想定し、火星でも住めるようにする構想です。「巨大な宇宙船を開発して100万人を移住させ、文明を築く」と言っています。もっとも、「移住」に向けた前段階となる火星への有人探査ですら、マスク氏が計画を提唱する以前から構想されていますが実現していません。 スペースX社の衛星インターネットサービス「スターリンク」は、ロシアの侵攻を受けたウクライナにも提供され、戦争遂行の重要なインフラとなりました。ただ、スペースX社は宇宙開発をめぐって連邦政府と契約を結ぶ関係にあります。次期トランプ政権でマスク氏が要職に就任すれば、利益相反につながるとの指摘も出ています。 マスク氏の名は、電気自動車大手「テスラ」社の代表として世界に知られるようになりました。2008年に同社のCEOに就任し、現在もその座にあります。テスラは電気自動車で世界のトップ企業。中国企業の猛追を受けつつ、2023年は約180万台を販売しました。自動車メーカーの時価総額では、トヨタを上回って世界トップ。全業種で比較しても時価総額は世界トップ10入りしています。 しかし、テスラは自動運転機能の安全性などをめぐって、米政府の調査を受けている立場です。トランプ次期政権の政府効率化による規制緩和が、テスラに有利に働く可能性も否定できません。 マスク氏の事業はほかにもあります。2016年には、人間の脳に小型機器を埋め込み脳波を読み取って外部のコンピューターと通信する技術を開発する「ニューラリンク」社を設立しました。さらに、2022年にはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「ツイッター」社を買収して社名とサービス名を「X」に変更しました。 2021年1月6日に米連邦議会議事堂がトランプ支持者に襲撃されました。民主主義の根幹を揺るがす大事件で、トランプ氏が襲撃をあおったとされたことは、多くの日本人も記憶しているはずです。その事件後、旧ツイッター社は「暴力行為を扇動する恐れがある」として、トランプ氏の個人アカウントを停止しました。しかし、マスク氏は買収後の2022年11月、トランプ氏のアカウントを復活させています。 米経済誌『フォーブス』が発表している世界長者番付によると、2022年4月にマスク氏は初めて首位となりました。2024年4月の発表では2位だったものの、総資産額は1950億ドル(約30兆円)。小さな企業の経営者から億万長者に上り詰めたマスク氏には、世代を問わず、一定の支持が寄せられています。トランプ氏は、そうしたマスク氏の財力とカリスマ性に期待を寄せているのです。