レンタル不振、だぶつく在庫…建機大手、北米で“ブレーキ”
北米市場の建設機械需要に“ブレーキ”がかかっている。コマツは2025年3月期の需要見通しを、4月時点の前期比5―10%減から同10―15%減に引き下げた。レンタル会社の在庫が積み上がった状態で新車購入が増えず、レンタル料金の値下げ競争も起きているという。建機大手各社は24年末ごろから需要が徐々に戻り、25年からは本格回復をにらんでいたが回復時期は半年以上ずれ込む見通しで、各社の戦略にも影響を与えそうだ。(編集委員・嶋田歩) 【一覧表】建機大手2社の業績詳細 「業績予想は下期の回復が前提だった。米国に何度も行ってレンタル業界の状況を見て、(需要が)戻るには一定の時間がかかると考え方を変えた」。日立建機の先崎正文社長は先行きをこう説明する。同社は25年3月期の連結業績予想で、当期利益を7月公表比180億円減の800億円に下方修正した。北米市場の回復は25年度以降にずれ込むとみている。 住友建機も北米市場の油圧ショベル売上高が、24年1―9月期は492億円(前年同期は573億円)に減少した。住友重機械工業の渡部敏朗取締役専務執行役員最高財務責任者(CFO)は「米国で前年の先行発注の反動減が出た。代理店の在庫を減らすための金利販促策をやっている。まずは在庫を減らし、来期からの売り上げ回復に即、結びつけられるようにしたい」と解説する。 北米市場は24年3月期に建機各社の業績が好伸した時の主導的役割を担ってきた。日本建設機械工業会の仕向先別出荷金額によると、23年度は北米の割合が前年度比2・2ポイント上昇の32・3%と国内市場(31・9%)を抜いて最大の仕向先となった。24年4―6月期には36・4%とさらに比率が高まり、北米頼みの構図が鮮明になっていた。足元の北米市場の変調は、建機各社のこれまでの戦略に見直しを迫る。 北米の変調をカバーすると考えられるのは鉱山機械の好調とアジア市場の回復などだ。コマツは25年3月期の鉱山機械売上高見通しを4月時点の1兆7097億円から、1兆8457億円(前期比7%増)に上方修正した。小川啓之社長は「鉱山大手の旺盛な投資意欲は変わらない。インドネシアも農業関係も含め、需要が伸びている」と話す。アジア地域の売上高は前期比10・3%増の4845億円を見込む。一方、日立建機はアジア地域売上高を同7%減の1176億円と予想する。 日立建機で好調なのは部品・サービスやレンタルなどのバリューチェーンビジネス関係。25年3月期の売上高は同4・7%増の5809億円を見込む。先崎社長は「バリューチェーンの売上高は上期に過去最高を記録、今後もしっかり伸ばしたい」と意気込む。 部品・サービスなどのバリューチェーンビジネスは過去に売った建機が対象となるため、新車販売に比べて景気変動の波に左右されにくい。コベルコ建機は4月に、社長直轄組織で「アフターセールス本部」を新設した。住友建機も千葉工場(千葉市稲毛区)で、研修施設を利用してアフターセールス技能の底上げを図っている。 北米市場の回復に頼れない分をどのようにカバーし、収益力を高めるか。各社の知恵比べが始まっている。