人は偉くなるほど仕事ができなくなり、組織が肥大化すれば無能化するのは必然だった…あなたの身を滅ぼしかねない「SSK」とは
最近のアメリカではテクノロジー業界を中心に大規模な人員削減が起こり、リストラは今も続いていると言われます。そのようななか「会社に身を任せて生きていくのは危険。必要なのは、自分が勝てそうな<場所取り>をすること」と話すのは、リクルート社の初代フェローを経て教育改革実践家として活躍する藤原和博さん。今回は、藤原さんの新刊『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』より「昇進によって増えていく<SSK比率>」について紹介します。 【書影】「組織を離れてもメシが食える」生き方とは。藤原和博『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』 * * * * * * * ◆40歳でリクルートを退社後「フェロー制度」第1号に 社内でのポジションには注意を払いましょう。 昇進を手放しで喜ぶような“おめでたい人”になってはいけません。昇進した結果、エネルギーが大きくなる人はいいですが、なかにはエネルギーを奪われる人もいるからです。 私は40歳でリクルートを退社し、インディペンデントの新規事業の立ち上げ屋として、リクルートではじめて、会社と対等のプロフェッショナル・パートナー契約を結びました。「フェロー制度」です。 当時、私は部長職にあり、3人の子供(6歳、2歳、0歳)を抱えていました。そのような状態で“一匹狼(いっぴきおおかみ)”になるのは珍しかったようで、マスコミからたびたび取材を受けました。何度も聞かれたのは、「どうしてそんなリスクを冒(おか)すのか」です。 会社という組織のなかでは、現場を離れて課長、部長、局長と昇進すると、定年までに大きなリスクを背負い込むだろう、と私は考えていました。 部下を預かり大きな部隊を率(ひき)いるほど、したい仕事を自分でできなくなります。できるだけ部下に任せて、その育成を図(はか)るのが、管理職の仕事だからです。
◆SSKで身を滅ぼしてはいけない こうして、自分の時間の6~7割は次の3つに費やされることになる。 (1)接待や部下との同行営業、これには社内接待の時間も含まれる (2)部下の査定や人事、これには部下との飲み会の時間も含まれる (3)会議とその根回し、これには関連部署との社内調整の時間も含まれる 私はこれを称して、「接待(Settai)」「査定(Satei)」「会議(Kaigi)」の頭文字を取って「SSK比率」と呼んでいました。 実際、役員のスケジュール表を見れば一目瞭然です。「SSK比率」が9割に達する人もいるのです。 会議に出れば出るほど、自分本来の仕事をする時間が奪われます。仕事ができる人ほど偉くなり、偉くなるほど仕事をする時間が減る。これが昇進のジレンマです。 会議の進め方はうまくなっても、どんどん仕事のできない人になる。そして、自分が偉いという幻想に酔っているうちに、現実が襲ってきます。 外の社会で通用しなくなっていることに気づかされるのです。 だから、可能な限り、SSKに費やす時間を極小にしましょう。 40歳で部長職を擲(なげう)つのと、自分本来の仕事ができずに無能化するのと、どちらがリスクが高いか。 私は、後者だと考えたわけです。私には、多くの会社員はリスク(組織に潜<ひそ>むリスク、エネルギーを奪われるリスク)を先送りしているだけに見えました。
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