よくわかる「ニューロダイバーシティ」 企業の対応は? Neurodiversity at Work代表 村中直人氏に聞く
人間は「レンガ」ではなく「石垣」
――「人間同士はお互いに似ているものとして扱う」というような慣れ親しんだ見方から頭を切り替えるのはなかなか難しいものです。 「講演などで例え話として伝えているのは、人間は『レンガ』ではなく『石垣』だということです。多くの企業では、これまで従業員は基本的に均一なレンガのような存在だと前提して制度を設計し、経営してきました。だから全員テレワークか、全員オフィスワークかという議論になるんです。けれど科学的に見て人間同士はそんなに似ていない。一人一人かなり違うという視点に立って『石垣』を造るように経営していくことがますます重要になっていくでしょう」 「ダイバーシティ経営も、女性活躍や障害者支援をマイノリティーに対する施策だと狭くとらえているとなかなか抜本的な変化につながりません。そもそもレンガのようなマジョリティーがいるわけではなく、組織は石垣のようなものなのだと見方を切り替える。また、石垣を組むには1回でうまくいくことはなく、組み直してバランスをとっていきます。それは企業でいえば人材の流動性を高め、柔軟に配置できるようにするということ。プロ野球でも現役選手を対象とする『現役ドラフト』が導入され、活躍する選手が出てきています。同じようにして『企業内ドラフト』を実施するのも一案だと思います」 「今までの経営は『人間同士って似てないんだ』ということに真剣に向き合わなくても済んだ面があるのではないでしょうか。それでも事業が成長しているうちは向き合う必要性に迫られなかった。限りある人材をいかに活用していくか、ぜひニューロダイバーシティの視点を経営やマネジメントに生かしていただきたいと考えています」 村中直人(むらなか・なおと) 1977年大阪府生まれ。臨床心理士としてスクールカウンセラーなど主に教育分野で発達障害など特別なニーズのある子どもたち、保護者の支援を行う。支援を行う中でニーズに対する支援の少なさを実感し、2009年に一般社団法人 子ども・青少年育成支援協会を設立。企業向けにも日本型ニューロダイバーシティの実践サポートを積極的に行っている。 (聞き手は若狭美緒)