ビジネスに役に立つかわからない「アートにかぶれる上司」に困惑 美的感覚は超一級でもビジネスリーダーとしてはどうなの?
マンガ編集者の経験を持ち、作家業の傍らマンガ原作も手掛ける堀田純司氏が、ちょっと困った“今ドキ上司”や“あるある経営者”を歴史上の人物になぞらえて紹介する新シリーズ「こんな上司は嫌だ」。 今回のテーマは「アートにかぶれる上司」です。近年、現代アートに傾倒する経営者が増えています。ビジネスセンスにも良い影響を与えるといわれていますが、社員や部下たちの本音は少し違うよう……。 この現象に対して堀田氏が、歴史上の人物を引き合いに出しつつ、アートが本当にビジネスに役立つのかを鋭く考察します。
趣味にうつつを抜かしているようでは大丈夫か
なぜかアートに傾倒する経営者、それも現代アートをめでるビジネスパーソンが、フィーチャーされがちです。 しかし、ついていくほうの部下としては、そんな上司の姿に「どうも不安を覚えてしまう」というのが本音ではないでしょうか。 ひとつには「そんなビジネス以外の趣味にうつつを抜かしているようでは大丈夫か、この会社」と先行き不安になってしまうところがあるでしょう。 それに、そもそも「そんな影響されやすい人についていっていいのか?」と根源的な不安も感じてしまう……ことは、ありませんか?
確かに「アートをめでることはビジネスセンスを磨くことにもなる」。そう指南するナラティブは世間に数多い。 いわく「グローバルに活躍する経営者はアートを愛する」「アートがビジネスに役立つ直感力を育てる」など。こうしたとき、いつも引用されるのはスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクです。 しかもややこしいことに「アート」には、投資という側面もあります。特に現代美術となると、今日は訳のわからない造形物に見えたものが、明日は莫大な価格で取引される最先端の芸術品になり得る。 センスも磨かれるうえに、利益を生む可能性もある。もしそうなれば自分のステータスも爆上げ、ということでこの分野、いわゆる「ドヤ感」が膨満していくわけですが、しかし本当にアート鑑賞がビジネスに役立つのでしょうか。 と(貧しい心で)疑ってしまうのは、歴史上、アートを見る目は超一級でありながら、政治家としてはまったくの無能。おまけに家庭人としてもほぼ完璧にダメという人がいたからです。 そう、銀閣寺を建立した足利義政。室町幕府の第8代将軍です。