精彩欠く女子バレー“中田ジャパン”は1次リーグを突破することができるのか…31日に絶対に負けられない韓国戦
「ブラジルにはパワーで抜かれる。日本はパワー差を技術とスピードで埋めようとしていてブロックに当て出すスタイル。言い方は悪いが、手首を使う小手先のスパイク。石川選手も身長が低い分、ブロックで当てて出すようなスパイクが上手いが、決定力という部分では物足りない。スパイカーはフィジカルを鍛え、もうちょっと体が浮いてこないと苦しい」 実は、植田氏は、4年前に早大大学院スポーツ科学研究科に通い、2019年にブラジルバレーの強さの秘密をテーマにした卒論を製作している。その際、ブラジルの複数のナショナルコーチをインタビューして研究を重ねた。 「なぜブラジルをテーマにしたかというと体格が日本人とそう変わらないから。調査してみると1980年代から“フィジカルを鍛えない限り世界一になれない”とブラジル連盟が指針を出し、週に4、5回のトレーニングを課し、あのアタッカーたちの体幹に優れた凄いフィジカル、パワーを作った。選手は15歳からトライアウトで集め、合格した選手には、住居、食事を提供して育成する。連盟の指針のもと年代別のトレーニングメニュー、リハビリメニューまで決まっていて指導者は連盟のライセンスがなければアンダー12、15を教えることもできない。それをブラジル全土でやってきた結果、北京、ロンドン五輪で連覇するような強豪国になった。対して日本はジュニアの育成も、高校のチーム任せで、それぞれやり方が違い、その世代では世界に対抗できるが、23歳を境に開きが出る」 メジャーリーグでは、大谷翔平が本塁打争いで単独トップに立ち、NBAでは八村塁や渡邊雄太が活躍しフィジカルでも日本が世界と対抗できることを証明している。だが、女子バレーではパワー差の克服はできていない。 ずっと議論されてきた“永遠のテーマ”だが、本気で金メダルを目指すのであれば、長期的な大型プロジェクトの導入が必要なのかもしれない。 ゆえに植田氏は、ケニア戦で故障するアクシデントでベンチ入りできなかったエースの古賀紗理那の復帰が、たとえブラジル戦に間に合っていたとしても「劇的な展開にはつながらなかったかもしれない」という見方をしている。 日本は勝ち点「3」に留まり、セルビア、ブラジル、韓国に続きグループAで4位となった。準々決勝に進むギリギリのライン。31日の韓国、8月1日のドミニカ共和国との2試合は絶対に負けられない試合となった。 中田監督は「今日の試合をみんなで話し合って修正をかけていきたい。ライト側の籾井と田代、黒後と林で、ライト側のディグがある程度つながれば点数につながるのが収穫だった。これからの課題としては、すべての精度をしっかり詰めていかなければいけない。時間がないので、もう一回、気持ちを入れ替えて、明後日、がんばっていきたい」と語る。 アジアのライバル、韓国は世界ランキングでは5位の日本より下の14位で5月にイタリアで開催された「ネーションズリーグ」の予選ラウンドで対戦しストレート勝ちしている相手だが、今大会では、ドミニカ共和国にフルセットの末、勝利するなど勢いはある。 植田氏は、「古賀選手は間に合わないことを覚悟しなければならないだろう。ブラジル戦を見る限り、チームの士気と疲れが心配。黒後選手と荒木選手は精彩を欠き、島村選手も機能していなかった。最悪のケース、2連敗してしまう危険性もある。私も北京五輪で経験しているが、負けが込むと精神的に辛い。新型コロナ対策で、選手村を出られない状況では難しいかもしれないが、なんとか気持ちを切り替えてもらいたい」という見解。 具体的な打開策として、こんな意見を持つ。 「第3セットで林選手と田代選手が活躍したので、どういうメンバーで韓国戦に挑むかが難しいだろう。やはりスタートは今日の最初のメンバーでいくのが妥当かもしれない。日本のデータは、すべて韓国が持っていることを前提に、ブラジル戦ではほとんど出せなかった、ライン側に打つストレートスパイク、そしてトスをネットから少し離したクイックを積極的に使いたい。強豪に勝利するために、日本はアタック総数の30%はクイックを使っていきたい。レセプションでミスをせず、とにかく攻撃を機能させることが大事だと思う。今までやってきたことは何か?具体的に確認すべきだ」 キャプテンの荒木は韓国戦に向けて覚悟を決めた。 「苦しい戦いが続くのは間違いない。今までやってきたこと、チーム一丸となってしっかりと戦うことを意識してがんばりたい」 中1日で最大の正念場とも言える韓国戦を迎える。