アメリカ文化と日本文化の意外な共通点(上)――文明からの「別荘感覚」
5月下旬、アメリカのトランプ大統領が令和最初の国賓として来日しました。日本の歓待ぶりを「過剰なおもてなし外交」などと指摘する声がある一方で、「首脳同士の信頼関係を示した」と評価する見方もあるようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「アメリカ文化と日本文化には意外な共通点があると感じる」といいます。それはいったいどのような部分なのでしょうか? 若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
対比的に論じられてきたが…
トランプ大統領が令和最初の国賓として来日し、大相撲の千秋楽を観戦して優勝力士にアメリカ合衆国大統領杯を授与した。そして新しく即位された天皇皇后両陛下に挨拶したあと、横須賀基地を訪問して、空母化した自衛隊最大の護衛艦「かが」を、安倍晋三首相とともに視察した。この一連の行動に、僕は、日米同盟の固さと深さが、これまでにないレベルに、ある種文化的なレベルにまで達しつつあるという印象を受けた。 従来、「アメリカ文化」と「日本文化」は対比的に論じられてきた。「アメリカは西洋、日本は東洋」、「アメリカは物質文明、日本は精神文化」、「アメリカ文化には多様性があり、日本文化には均質性がある」など。しかし僕はそこに「意外な共通点」があることを感じてもいる。 やや突飛な印象を与えるかもしれないが、これを機会に、太平洋を挟んだこの二つの国の文化に対する共通感の正体を具体的に探ってみたい。これまでに書いたことも含め、僕の専門である建築に関する研究と、団塊の世代としてのアメリカ体験を振り返りながら考えていく。
「ユーラシアの帯」の延長
まず建築様式の分布研究から来る巨視的な視点を押さえておこう。 これまでにも書いたことだが、16世紀以後に西欧諸国が植民地に建てたものと19世紀以後の近代建築は別として、高度化した宗教建築の様式は、ユーラシアの東西にわたる帯状の地域に集中している。この「ユーラシアの帯」が人類の古くからの文明圏であり、西と東にそれぞれ中心域がある。西の中心域は「地中海」の周縁で、周辺を巻き込んでダイナミックに発展し、今やグローバルなものとなった「大きな文化圏」である。東の中心域は「黄河・長江」の流域で、比較的スタティック(静的)な「小さな文化圏」であった。 アメリカ文化はその「大きな文化圏」の先端的延長で、日本文化は「小さな文化圏」の延長であるが、日本は、明治維新以後、急速に大きな文化圏に入り込み、すでにその重要な一角を占めている。このことが、日米文化に、対照的であると同時に相似的という、微妙な結果を生んでいるのだ。