ウルグアイ代表が本気になる理由
2011年11月にスタートしたW杯南米予選で、ウルグアイ代表は最初の5試合を3勝2分けと快調に滑り出した。しかし、昨年9月7日にコロンビア代表に喫した初黒星で歯車が狂い、同10月にはアルゼンチン代表、ボリビア代表に連敗。悪い流れは今年に入っても止まらず、3月26日には4位の座を争うチリ代表にも0対2と苦杯をなめた。チリ代表との勝ち点差は「5」に開いている。 本来は人に対して強く、時にはファウルを厭わないタイトな守備からの速攻がウルグアイ戦い方のベースだ。しかし、先制点を許す展開が続けば相手に余裕を持って戦われ、ベテランのフォルランやウルグアイ代表史上で最多の36ゴールをマークしているスアレス、今回の遠征には参加していないカバニらの強烈な推進力と高い決定力を生かしたカウンターを発動させることすらできない。 守備陣が奮起し、失点の連鎖に歯止めをかけたのは、6月6月に首都モンテビデオで行われたフランス代表との国際親善試合。ともに188cmの長身を誇るセンターバック、キャプテンのディエゴ・ルガノ(ウェスト・ブロムウィッチ)とディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリッド)のコンビを中心に相手の猛攻に耐え忍び、後半から投入されたスアレスのゴールで逃げ切った。 その5日後に行われたベネズエラ代表とのW杯南米予選も1対0で勝利。重苦しいムードを一掃し、臨んだコンフェデレーションズカップでは、初戦でスペイン代表に1対2で敗れながらもベスト4に進出した。 準決勝のブラジル戦では、あえてボールを持たせ、シュートを打たせ、挙げ句に強引な攻めを誘発してはカウンターを狙う「狡猾さ」で対抗した。最終的にはブラジルの個人技の前に屈し、後半終了間際に決勝点を許して1対2で敗れてしまったが、前半13分に獲得したPKをフォルランが決めて先制していれば……「肉を切らせて骨を断つ」戦法は奏功していたかもしれない。 3位決定戦でのイタリア戦ではセットプレーから2度も先行を許しながら、その都度、カバニのカウンターと豪快な直接FKで同点に持ち込んだ。国際サッカー連盟が定めるマン・オブ・ザ・マッチに勝者のイタリア代表の選手ではなくカバニが輝いたことからも、いかにウルグアイ代表の堅守速攻の切れ味が鋭かったかが分かる。結局2対2のドローでPK戦にもつれこみ敗れたが、そのカバニは試合後、フランス戦から始まった6月の一連の戦いの価値を、イタリアのメディアに対してこう語っている。 「有意義な1か月だった。我々の(勝利への)飢えとキャラクターを示すことができた」 キャラクターという言葉に、W杯南アフリカ大会や翌2011年のコパ・アメリカ制覇で見せた伝統の堅守速攻を取り戻した自負が見え隠れする。そうした「いい流れ」を、正念場の戦いへつなげるために。ウルグアイ代表にとっては、コンフェデレーションズカップと9月のW杯南米予選の間で、主力が集まれる唯一の機会となる日本代表戦においてベストメンバーで戦うことが必要不可欠だったわけだ。