「無能な起業家が多すぎる」…「ドラッカー最後の弟子」と称される著者が語る”優秀”な人材と”無能”な人材の決定的な「差」とは!?
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第70回 『「熱があっても出社する」ことを美徳とする日本人…現代にも蔓延る「昭和すぎる価値観」に囚われていませんか?』より続く
才能の原石の不安要素
スタートアップ、起業家の、あえて「界隈」という言葉を使いますが、その界隈では、「夢」のためにがんばる人が圧倒的多数です。そして、その界隈では「がんばる」のは当たり前です。深夜まで、土日もいとわず働く人も珍しくありません。先程のモーレツ社員、バブル期のビジネスパーソンと、さほど変わらないのです。 起業家たちが集う場にいると、いわゆる「強キャラ」がたくさんいます。休みなんていらない。人より少しでもたくさん働く。弱音は吐かない。熱が出ても働く。 そんな姿を見ていると少し不安になります。バブソンの学生でもバリバリにがんばって、彼・彼女のせいではなくビジネスが上手くいかず、挫折して、心が折れてしまう人がいます。あんなにイケイケで強キャラ全開だったのに、たった一回の失敗で、折れてしまうのです。 ダイヤモンドはとても硬く、モース硬度で10とされています。しかし、ダイヤモンドはハンマーで叩けば割れます。モース硬度というのは、「ひっかき硬度」と言われていて、「傷つきにくい」だけで、衝撃には弱いのです。
無理と無茶の違い
一方、ゴムの塊をハンマーで叩いてもそう簡単には割れません。 無理と無茶の違いという話があります。起業家は無茶をしがちです。無茶とは「客観」です。他者から見て「できないだろう」「そんなこと現実的じゃない」「難易度が高い」、そう思われていることが「無茶」です。 まさにそれに挑戦するのが、起業家だと言えます。周囲から無茶だと思われていることを実現することに価値や喜びを感じているのです。 しかし、「無理」は「主観」です。たとえば、これ以上寝ないで働くと倒れる。これ以上の資金調達はできない。仲間だってこれ以上無給で働けない、給料をあげないといけない。 つまり、無理とは「不可能」のことなのです。それを強キャラで押し切ろうとすると、ダイヤモンドをハンマーで叩くように割れてしまうでしょう。できないことはできないと自覚して、別の方法を考える。時期を見る。助けを借りる。無茶はしても無理はしない。そういった柔軟性も重要になってくるのです。
山川 恭弘