世田谷区のふるさと納税流出109億円、危機感強める区は返礼品を大幅拡充…区民税8%近くが流出
東京都の世田谷区民が他自治体にふるさと納税をしたことで、世田谷区は今年度分の、住民税の流出額が約109億円(速報値)となり、23区で初めて100億円を超えることが分かった。流出額は昨年度分より約1割増え、11年連続の増加となっている。当初予算と比較して、区民税の8%近くが流出していることになり、区は危機感を強めている。(石井恭平) 【表】人口1人当たりの寄付受け入れ額が多い自治体と主な返礼品
都内の自治体で流出額が最多の状況が続いている世田谷区では、控除の上限額を倍にする改正が行われた2015年度から急増。同年度の約2億6000万円から、23年度は約98億円に達した。
区がまとめた速報値によると、昨年1~12月、区民約15万人がふるさと納税で約274億円を寄付。うち、流出額にあたる区税額控除額は109億5277万円だった。7月下旬には確定値が出る見込みだが、未把握分が加わると、最終的には110億円を超える可能性が高いという。
ふるさと納税で流出した額の75%は地方交付税で穴埋めされる。しかし、23区は比較的税収が多く、地方交付税の不交付団体のため、一切補填(ほてん)されない。
区は流出分を補うため、世田谷区への寄付拡充を図っている。当初は過度な返礼品競争には加わらない立場で、地域貢献に役立てることをPRして寄付を募っていたが、22年11月から方針を転換し、返礼品を大幅に拡充させた。23年度の区への寄付額は約3億3260万円で、21年度から2倍以上に増えたが、流出額との差はまだまだ大きい。
23区長で作る特別区長会は昨年11月、住民税が流出している状況を踏まえ、「ふるさと納税制度は廃止を含めて抜本的見直しが必要」との主張を取りまとめた。12月には都知事と都内市町村長との連名で、改めて制度の抜本的見直しを求める共同要請を総務相に提出している。
区は今年4月に「ふるさと納税対策担当課」を組織改編で設立し、流出抑制や区への寄付拡大策を模索している。斉藤洋子課長は「制度の見直しを訴えるとともに、寄付してもらう額を増やしたり、世田谷区民に世田谷区への寄付をお願いしたりと、対策を進めたい」と話している。