劇的ドローで連敗ストップの浦和レッズは大槻新監督初陣で何がどう変わったのか?
後半アディショナルタイムは表示された4分を超えていた。獲得した左コーナーキックがおそらく最後のプレーになる。ベンチ前で戦況を見つめていた、浦和レッズの大槻毅新監督(46)と思いを同調させた守護神・西川周作(32)が、川崎フロンターレのゴール前へ上がっていく。 「大槻さんからゴーサインが出たので。ラストということも把握していたし、最後まであきらめない気持ちを何としても出したかった」 こう振り返った西川は、最初はファーサイドへポジションを取ろうしていた。等々力陸上競技場で1日に行われた明治安田生命J1リーグ第14節。レッズが1点を追う土壇場で何かが閃いたのだろう。DF槙野智章(32)がアドバイスを送ってきた。 「周ちゃん、ニア(サイド)へ突っ込んでくれ!」 果たして、MF武藤雄樹(30)が蹴った低い弾道のボールはニアサイドへ走り込み、最後はジャンプした西川の頭のわずか上を通過する。しかし、目の前に現れた西川がブラインドになったからか。フロンターレの選手によるクリアは、やや小さくなってしまう。 次の瞬間、ペナルティーエリアの外に陣取っていたレッズのMF宇賀神友弥(31)が、体勢を崩しながらクリアに右足を合わせる。シュートともパスとも表現できない当たり損ねのボールに対して、誰よりも早く反応した西川が懸命にダッシュ。自身の前方にいたMF長谷川竜也(25)を追い抜いた。 「クリアされて足を止めるのではなく、戻るという意識があった。あそこで相手選手の前に自分が入れたことが、ひとつのポイントになったのかなと」 西川が左足で軽くボールに触れてコースを変える。味方の姿は見えていない。それでも、ゴール前の密集地帯で何かが起これば――守護神の祈りはフロンターレのDFジェジエウ(25)の左足に当たったボールが、MF森脇良太(33)の目の前にこぼれてくる形でかなった。 森脇の右足から放たれた一撃が、フロンターレのDF谷口彰悟(27)の体に当たってコースを変える。劇的すぎる同点弾。狂喜乱舞するレッズの選手たちとは対照的に、王者を相手に采配を振るった大槻監督は試合直後も十数分後に公式会見に臨んでも厳しい表情を変えなかった。 「監督が代わって『やってやろう』というところが出た前半と、できない部分が出た後半で二面性があった。そのなかでもあきらめない部分が、最後につながったところはツイているな、と。そして、この勝ち点1が次への大きな一歩になってほしいと思っている」