劇的ドローで連敗ストップの浦和レッズは大槻新監督初陣で何がどう変わったのか?
令和時代に入ってリーグ戦でまさかの4連敗を喫し、5勝2分け6敗と黒星が先行。順位を11位にまで下げた非常事態を受けて、5月28日に昨年4月から指揮を執り、チームを天皇杯制覇へ導いたブラジル人のオズワルド・オリヴェイラ前監督(68)が解任された。 後任を託されたのはオリヴェイラ前監督が就任するまで暫定監督を務め、公式戦で4勝2分けと不敗神話を残した大槻氏。髪をオールバックで固め、背広姿で強面の表情で采配を振るう姿は「組長」や「アウトレイジ」と呼ばれ、ファンやサポーター、そして選手たちのハートをつかんだ。 予期せぬ再登板だったことは今年3月にトップチームのヘッドコーチから、海外クラブとのネットワーク構築推進プロジェクト責任者に抜擢された人事からもわかる。暫定の二文字が取れた今回。フロンターレ戦までの3日間をすべて非公開練習としたなかで、新監督は3つの変化をチームに与えた。 まずはオリヴェイラ前監督時代にほぼ固定されていた先発陣を流動的とした。0-4で完敗したサンフレッチェ広島との前節から先発陣を5人入れ替えた。そのなかには右ウイングバックとして公式戦デビューを果たした、明治大学卒のルーキー岩武克弥(22)も含まれている。 前日練習における先発組からも大きく顔ぶれが変わっていた点を、槙野は「チームにすごくいい刺激が入った」とポジティブに受け止めている。 「いままで普通にやっていた練習のなかでもピリッとした動きや時間があり、そうした練習の雰囲気のまま試合に入ることができた。もちろんオリヴェイラ監督のときの練習がダラダラしていたわけではないけど、やっぱり普段の練習は嘘をつかないと思いました」 2つ目の変化はシステムだ。3バックこそ踏襲したものの、中盤の形を「3ボランチ」から「ダブルボランチ」へスイッチ。1トップの興梠慎三(32)の背後に2人のシャドー、武藤とマルティノス(28)が配置された意図を槙野はこう受け止めている。 「人数を前へかけられるようになったのは、このシステムの大きなメリットだと思う。各選手がそれぞれのポジションで、メリハリの効いたテーマが与えられているので狙いもはっきりしていた」 徹底的にパスをつなぐフロンターレへ、前半は積極果敢に前線からプレッシャーをかけ続けた。そして、ともにスコアレスで折り返したハーフタイム。大槻監督が選手たちに訴えかけた言葉が、レッズに与えた3つ目にして最大の変化を象徴している。 「前半の出来で満足か? 違うだろう。後半はあと5%、運動量を増やそう。絶対に走れる!」 相手チームの戦術分析に長けている指揮官は、同時に選手たちのモチベーションを高める術も持ちあわせている。厳しく聞こえる一方で、選手たちへの愛情と信頼に満ちた言葉。たとえば緊張しているはずの岩武には、武器を踏まえたうえで「後先を考えずに走り切れ」と背中を押した。