「間違ってるのは全部この会社」次々と処刑されていくクズ社員たち。不穏な事件に関わる同僚の秘密とは【書評】
「お人よしが損をする」学生時代や職場など、コミュニティの中でそう感じたことはないだろうか。他人を利用したり貶めたりする人が、残念ながら世の中には存在する。 【漫画】本編を読む
そんな悪事を働く人を次々と“処刑”していくのが本作『社内処刑人 ~彼女は敵を消していく~』(タナカトモ:原作、つかさき有:漫画/ぶんか社)だ。2024年4月にドラマ化もされた人気漫画である。 しがない派遣社員の浅見ほのかは、なかなか会社になじめず、日々を淡々と過ごしていた。ある日、美しく魅力的な女性・深瀬のぞみが入社してくる。あっという間に人気者になるのぞみだったが、彼女は地味なほのかとも親しくしてくれた。 ほのかは同僚からの嫌がらせに居心地の悪さを感じながらも、「私は取りえもないし」と現状を甘んじて受け入れていた。お人よしで自信のないほのかのようなタイプは、実社会でもターゲットにされやすいかもしれない。 本作には、次々と陰湿な嫌がらせをしてくる同僚が現れる。彼女たちからの攻撃に心が折れそうになるほのかを、のぞみは強く励ましつづける。「私に任せて」「もう手は打ってある」と含みのある表情で話すのぞみの姿に、少しばかりに怖さと不気味さを感じてしまう。 やがてほのかのことをバカにしていた同僚が、ある事件をきっかけに退職に追い込まれる。「深瀬に殺される……」街中で偶然出くわしたその同僚は、怯えながらそうつぶやいていた。こうして、徐々に社内の隠蔽された過去とのぞみの正体が明らかになっていき……!? 本作は、単に悪者を成敗するストーリーでは終わらない。ほのかを攻撃した同僚たちが社会的に消されていくスカッと感はあるものの、すべては「5年前のある事件」につながっていく。そして、のぞみは強い復讐心のもと、この会社に潜り込んでいて…というサスペンス展開にハラハラさせられるのだ。 しかし、のぞみの復讐は順調には進まない。物語の進行とともに、のぞみの計画を阻む「何か」の存在がちらつき始める。その「何か」に常に見張られているような不気味さ。そんな不穏な様子を見て、打たれ弱かったほのかが「のぞみが何かを抱えているなら」と強く向き合っていく様子も、見どころのひとつだ。 「何年も前から陰湿なクズばかり」「5年前にこの会社がしでかしたこと」というのぞみの言葉と、怒りに満ちた表情。5年前に起きた事件とは何なのか? 黒幕はいったい誰なのか? サスペンス好きにはぜひとも読んでいただきたい。 文=ネゴト / いなり