金融庁出向中の裁判官がインサイダー取引か 証券監視委が強制調査
業務で知った企業の内部情報をもとに株取引をした疑いがあるとして、金融庁に出向中の裁判官が、証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で強制調査を受けたことが関係者への取材で分かった。 監視委は東京地検特捜部への告発も視野に調査している。 関係者によると、強制調査を受けたのは金融庁企業開示課課長補佐の30代男性。裁判官として任官し、今春の異動で金融庁に出向した。金融庁への異動に伴い、裁判官の身分は外れている。 出向してまもなく、業務を通じて知った情報をもとに株取引を開始し、数カ月にわたり、複数の企業銘柄の株取引を繰り返した疑いがある。監視委は8月ごろから調査を進め、今年秋、課長補佐の自宅などを強制調査したという。 金融商品取引法は、上場会社に対して調査権がある監督官庁の公務員などが、業務で知った会社の重要事実をもとに株取引をすることを禁止し、違反すれば課徴金などの行政罰や5年以下の懲役・500万円以下の罰金といった刑事罰が科せられる。 金融庁は内規で全職員に対し、職務上関係する企業の株取引を禁じている。 裁判官の出向は、多様な経験を積んで法律家としての広い視野を養うことなどが目的とされる。00年代に進んだ司法制度改革でも外部経験の必要性が提言され、出向の規模が拡大した。 昨年末現在、省庁への出向者は法務省を中心に160人を超える。最高裁によると、金融庁には11人が出向中だという。
朝日新聞社