京都に新たな音楽空間が誕生。田中知之が手がけた、森の中で音楽を浴びるミュージックラウンジ。
FPMの田中知之がプロデュースしたサウンドフォレスト〈FUL〉。京都出身の彼が思い描く音楽の鎮守の森とは? 【フォトギャラリーを見る】 降り注ぐような音には、えも言われぬ心地よさがある。田中知之が7月に京都でオープンさせたミュージックラウンジはサウンドフォレストを標榜。彼が提供する新しい音楽体験とは? ──〈FUL〉誕生の経緯を聞かせていただけませんか? 京都・木屋町にミュージックバー的なものを作ってほしいというオファーでした。でもイメージを膨らませるうちに大口径のスピーカーもなければ、居並ぶレコードもターンテーブルもないという形になってしまったのです。いわゆる今流行っているミュージックバーのアイコンが、すべて排除される形になっちゃって(笑)。
──なぜ、そういう形に? 京都という街を想起したら、スピリチュアルで“鎮守の森”のような音楽ラウンジがあったらおもしろいかなと。そこで〈MAESTRO〉の綛谷武史さんや〈松竹園〉の竹岡篤史の手を借りて、店内に森を仕立ててみたのです。 ──降り注ぐサウンドスケープはいわゆる空間音楽ですか? いや、ドルビーアトモスを使った空間音楽のような三次元の多チャンネルではないです。〈1SOUND〉というアメリカのスピーカーを10基天井に配して音楽の森を作り出しています。この〈1SOUND〉、バリ島のセレブ御用達のビーチラウンジ〈POTATO HEAD〉でも使われている人気のスピーカーで、解像度が高く、周波数帯の整理が行き届いていて、僕が狙うサウンドフォレストを作るにはうってつけの機材でした。
──選曲はどんな感じですか? 一言で言えば静謐な音楽。賑やかな音楽が流れるお店にしないことを中心に置きたいと考えています。アンビエントに限らず、アコースティック、チルアウト、ジャズ、クラシック、現代音楽とオールジャンルからセレクトして、森の中に降り注ぐような環境で聴いてほしい。今は僕が選曲していますが、ゆくゆくいろいろな人にお願いしたいと思っています。静かな音楽を解像度が高いスピーカーで、ある程度の音圧で聴く体験はいいものですよ。
〈FUL KYOTO〉
京都府京都市中京区河原町通三条下ル大黒町67-3。17時~翌3時(Food翌2時、Drink翌2時30分LO)。月曜休。
photo_Keisuke Fukamizu text_Akihiro Furuya