「は? 隣人が土産をくれないから、なんとかしろだと!」市役所に現れるヤバい「市民クレーマー」によって心身の不調が...市役所カスハラ問題とは
2025年4月、東京都カスハラ防止条例が施行されることをご存知だろうか。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、この条例についてこう話す。 「お隣は若いママさんでいいわねぇ」43歳「初産嫁」を年齢でイビる姑に「夫」が放ったヤバすぎる一言 「顧客がお店や企業などに対して理不尽なクレームをつけたりする行為を『カスタマーハラスメント』と呼ぶことはかなり認知されてきました。 来年4月に施行される都の条例では、カスハラの定義を明確にしているほか、カスハラ防止の理念や、防止するために都・顧客等・就業者・事業者それぞれがどんな責務を担うべきかなどが盛り込まれています。 かねてから大きな社会問題となっていたカスハラがようやく世間に認知され法整備が進みつつあることは、黙って客の言うなりになったり、非常識な要求に苦慮したりしてきた事業者側にとって、大変明るいニュースと言えるでしょう」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カスハラは一般の事業所だけでなく、公的機関でも日常的に起きている。「サービスがお気に召さなければお代をお返ししますのでお帰りください」というわけには行かない公的事業従事者は、日々どんなカスハラに苦しんでいるのか。 都のカスハラ防止条例施行を前に取材にあたり、すでに公的機関を退職した2名の方に話を聞いた。 「一般の商業施設やお店と同じように、住民生活課にも困った利用者はたくさん来ます」 こう話すのは、1年ほど前までとある地方自治体の「住民生活課」窓口にお勤めだった荻原弥栄子さん(仮名/40代)。 「むしろ、民間のカスハラより厄介かも。キレてくる人の多くは、税金でお前らを食わしてやってる!という意識のある人たちなので……」 くり返し訪れるクレーマーの厄介ぶりについて、弥栄子さんは「実際に姿を見せた時はもちろん、『今日も来るのかしら』と怯えている時間もストレスだった」と言う。
「うちの課には、週に何度も同じことを言いにやってくるある老人がいました。言いにくいんですけど、いつもその人、異臭を放つんですよ。いかにもお風呂入ってない感じで」 その老人は常に同じような服装で、襟ぐりや袖口は黒く汚れ、少し離れた場所からも臭うほど不潔だったのだとか。 「その人が近くに来るだけでもしんどいんですが、毎回近所にお住まいの方に対する不満を口汚く言い募って、怒りまくっていきました」 最初はある近隣住民のペットがうるさいという話だった。『おい、うちの近所のババアがよ、庭で犬を4匹も飼いやがって、うるさいし臭いしどうしようもねえんだよ』などと文句を言ってきたそうだ。 「こう言っちゃなんですが、あなたもかなり臭いですよって、みんな思ってました」 この老人に最初に対応した職員は、『地域の町内会や自治会の会長さんに相談してみてください。ご自身で苦情を言いに行かれるとトラブルになりかねないので』とアドバイスをしたという。 「でも、助言された方法ではなかなか解決しなかったらしく、その後しばらくその件で通い詰めてきて……」 しかし、窓口に通ってくるうち、老人の話の内容は次々に変わった。その人の姿が見えただけで、課内には張り詰めた空気が漂うようになっていたそうだ。 「『そのくそババアはよ、俺以外の近所の連中には旅行の土産を配りやがって……』とか、ペットと無関係なことを言い始めたんです。玄関を掃く時に俺んちの方に埃をやってくる』とか、『挨拶しやがらねえ』とか……もう個人への不満と悪口ですよね」 老人は近隣住民の迷惑行為に悩んでいるというより、個人的にその人物を憎んでいるように思えた、と弥栄子さん。 「週に何度も近所の女性の悪口を言いながらキレるんです。しまいには『お前らがちゃんと足を運んで、ババアに俺ばっかりのけ者にすんじゃねえって言ってやれよ。市民の暮らしを守るのがお前らの仕事なんだろうがよ、この税金泥棒が!』って。は?って感じ」 膨大な仕事をこなさなければならないのに、1時間近く窓口で職員相手にキレていくこともあったという老人。しかも、他人の悪口を言いに来ただけなのに、市役所の駐車場が無料になる機械処理は必ず求めていったそうだ。 「上司が何度も根気良く対応してやがて来なくなりましたが、1か月くらいは通ってきたんじゃないでしょうか。その老人の姿を見ただけで顔色が悪くなる同僚もいたんですよ」 クレーマーは他にも大勢いた。 後編では、市役所職員を弱らせるクレーマーの「身の毛もよだつ」トンデモ要求を記述する。 取材/文 中小林 亜紀 PHOTO:Getty Images