突然の社長就任で「不安が次々あふれた」 食品メーカー3代目が進めた「逆ピラミッド経営」
人事評価の基準を明確化
人事面では適材適所を意識しています。土台には、杉本さんが新卒入社した食品問屋での経験がありました。 「事務職で入社しましたが、ミスばかりでダメな社員でした。ところが社長の提案で営業に配属されると、みるみる業績が上がり、仕事を楽しいと感じたのです」 オーケーズデリカでも、従業員の希望や適性、キャリアプランが明確になる人事を心がけています。面談、人事評価は年4回設け、昇給の機会も年3回あります。人事評価では、良いところを7割、改善点を3割、明確に伝えています。 「社員には自身の成長のために、会社が支援できることがあるか確認します。その答えが見えた方がキャリアプランでズレがなくなるからです。会社から求めることも評価項目に入れています」 例えば、誰かが休暇を取った時には、快くヘルプに入れるかを評価に入れています。「チームプレーが大事」とあいまいに言うだけでは不満が出るため、基準を明確にしたのです。 杉本さんは「社員は静かに辞めるもの」と言い、困りごとがないか、顔が曇っていないかなど、心の変化に注意を払っています。 社員と廊下ですれちがうとき、トイレやロッカーであった時など、何げない時間の声かけを意識しています。ガラス越しに手を振ることもあるそうです。 「声をかける内容は『髪切ったね』、『今日も寒いね』など何でもいい。私のことを気にかけてくれている、と感じてもらうことが大事だと思います。給料が上がる以上に大切なのは、頑張ったプロセスを見てもらったという『感情の報酬』と、気持ちのいい居場所があることなんです」
「おかん弁当」への一本化
2018年、オーケーズデリカはそれまで展開していた弁当を一新し、「おかん弁当」に一本化しました。「お客様のお母さんになった気持ちで作り、食べたいものとおかんのおせっかいで食べて欲しいものの両方が盛り込まれたお弁当です」 肉体労働が多い製造業者のために、肉と魚などボリューム感のあるダブルメインや、切り干し大根やひじきなど野菜など約20品目が入った栄養バランスの良い総菜を詰めました。 米は東北産、調理は酸化しづらい桑名市発祥の米油を使っています。 「安さで勝負するのはやめて、体にも優しく価値ある食材を入れて原価に反映しました。栄養バランスのよい昼食が取れることを目指しています」 取引先は700社程度に広がり、製造業など様々な業種に取引が広がっています。