「完熟梅での仕入れ」「柔軟な出荷時間」…では、あと1つは? 梅酒の「チョーヤ」、あまりに常識外れだった「3つの変革」
減農薬については1997年、「除草剤を使わず草を刈り取り、基準である農薬散布の回数と量を半分に」をスローガンにスタート。当時はまだ農薬の安全性への注目度は低かったそうだが、今はそれが広まり、他府県の農家も取り組むようになった。次のステップとして、有機栽培を始めたのは1999年のことだ。農家とグループを結成し、土作りや育成方法の研究にも取り組んでおり、この考えに賛同する農家は年々増えていっている。
そして、これらの取り組みの際にチョーヤが注意しているのが、農家に一方的な指示をしないことだそうだ。あくまで協力して行うことで、その結果は農家の知識となり、強みとなる。他方、チョーヤとしても、日本ではじめてJONA(特定非営利活動法人日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)有機認証を取得した梅酒『The CHOYA 大地の梅』を発売するなど、目に見える成果を得ている。ここでも、ウィンウィンの関係が構築されているのだ。
金銅氏はそれ以外にも、ほぼ一年中和歌山県に足を運んでいるそうで、「和歌山の梅農家の多くの方が私の顔を知っているのでは。文字通り、顔の見えるお付き合いをしています」と微笑む。日頃から農家や農協に対して、「梅がなくなったらチョーヤは商売を辞めます。弊社を潰さないでください。そのカギはあなたたちの手にあります」と伝えているそうだ。 ■チョーヤの不変の哲学。「90点の完璧」を追求する ここまで、梅を安定して仕入れ、安心安全な梅酒を作るため、チョーヤが行ってきた改革を紹介してきた。しかし反対に、長年変わらず伝え続けていることがある。「90点以下のものをつくらない」というスローガンだ。
その理由を金銅氏は、「化学製品や工業製品は100点を目指せます。機能性や、車であればスピードなどで数値化もできますよね。でも天然の果実はどこまでいっても自然の影響を受けますから、味を統一できなくて当たり前。毎年100点は到底無理です」と説明する。 そこで目標に据えたのが、「90点以下のものをつくらない」だったそうだ。「ブレンドの努力で90点は目指せます。90点以下の味をつくらないことを目標にすれば、お客様の期待を損なわず、信頼を失わないのではないでしょうか」(金銅氏)。