「完熟梅での仕入れ」「柔軟な出荷時間」…では、あと1つは? 梅酒の「チョーヤ」、あまりに常識外れだった「3つの変革」
しかも、年間生産量の約50%を6月の1カ月間で出荷しなければならない。だから6月は家族総出で梅の出荷を手伝ううえ、アルバイトも雇う梅農家が多い。もちろん、その年によって豊作、不作があるとしても、肉体的にも、精神的にも負荷の大きな期間となる。 ここで、さきほどの流通形態を変えたメリットが登場する。完熟した梅は青梅と出荷時期がずれるため、農家に余裕ができるのだ。しかも完熟梅での出荷なら、木からもぐのではなく、自然落下した実をネットで受ける「ネット収穫」となり手間も減る。
さらにチョーヤは、出荷形態も変えている。ネット収穫した梅を選別し、コンテナのままの入荷をOKとしたのだ。また、大きさの仕分けも簡素化し、通常4~5種類に分けるところを、3種類にした。ただし、完熟梅は傷みやすいため、通常の出荷では行わない1次洗浄を行うことを条件としている。そして、漬け込み直前にチョーヤで2次洗浄を行う。 加えてチョーヤは、出荷時間も変えた。青梅は、午前中に処理して午後13時、14時頃に農協に出荷がするのが基本だが、チョーヤの工場では早朝や夕方、夜間の入荷も受け付けている。このため、農家から農協への出荷が、夕方まで可能となる場合もある。そうすることで農家の時間の余裕を生み出しているのだ。
これら出荷体制の変更は約20年前、2003年頃からスタートしたそうだ。きっかけは1990年代の終わり頃、梅の出荷時期が遅く、有利な価格で販売がしにくいエリアの農家と、出荷時期を変えて取引をはじめたことにあったという。また、「青梅での出荷タイミングを逃して完熟した梅を引き取ってほしい」という声もあったそうだ。 「現在では農家の高齢化対策や、持続可能な農業のための省力化の取り組みにもつながっており、農家のみなさんに喜んでいただいています」と金銅氏は話す。
■3.安心安全を届けるため、栽培から変えた チョーヤは梅の栽培も変えた。前編で、チョーヤが和歌山県の農協を通じて農家と取引していると紹介したが、その理由の1つに安全性がある。和歌山県の農協は、農薬使用などの記録を農家から集めて把握しており、農薬を分析するシステムも持っている。つまり、農薬の量や種類をコントロールできており、万一何かあった際にはトレースも可能な梅を使っているのだ。 そして、チョーヤの安心・安全への追求はそれだけにとどまらない。農家と共に減農薬、有機栽培にも取り組んでいる。