電子マンガの“弱点”とは? 見開きページに関する脳科学研究を徹底解説!
本研究では、そうした視覚的な提示方法が脳活動に及ぼす影響について検証しました。また、言語反応に伴う脳活動の影響を最小限に抑えるため、擬音(ぎおん)などの例外を除きセリフや文字が使われていない「サイレントマンガ」を用いました(図22-A、Prema-Ja作「Sky Sky」(c)Coamix Co., Ltd)。 実験では、見開き2ページ分を一度に提示する通常の方法(「2pages条件」と呼びます)に対して、見開きを中央で左右に分けて1ページごとで提示する方法(「1page条件」と呼びます)を比較しました。 そこで注目するのは高次視覚情報処理であり、視覚刺激から生じた文脈の効果がどのように作品の理解に関係し、さらに共感を引き起こすのか、その脳内メカニズムの手がかりを得ることを目的としています。 一つの作品全体について、2pages条件では2ページの見開きで15秒間提示し、1page条件では1ページずつで7.5秒間提示して、ページの切り替えは自動です。 1page条件と比較して2pages条件では、視覚刺激の大きさに伴って注意を向け得る視野範囲が倍増しますが、視野周辺に提示された絵の細部にまで注意を向けるのは困難であり、高次の視覚情報処理は注意を選択的に向けた領域に限定されることが、電気生理学の実験で示されています。 また、どちらの提示方法も1ページあたりの提示時間は同じなので、単位時間あたりの視覚情報量は等しく保たれます。 実験参加者は中高校生40人で、「共感課題」では、短いマンガ作品(十数ページ)をストーリー通りに提示して、登場人物に共感した度合いをページごとに4段階で回答させました。 対照条件の「Control課題(Con)」では、文脈の効果が失われるように、異なる複数のマンガを見開きで1枚ずつランダムな順で提示します。 個々の絵に集中してもらうために、一見開きごとに画像のノイズとして雨粒状の透かしを左半分・右半分・全体のいずれかに含めたものを一部のページと入れ替えて、ノイズの有無を4択で判断させました(図22-B)。 これら二つの課題の対比により、ストーリーに対する文脈理解と共感を伴った高次の脳機能を抽出することができます。 なお、異なる作者による12の作品を6作品ずつの2セットA・Bに分け、参加者も半数の2群に分けて、群ごとに共感課題とControl課題で異なるセットを使いました。また、1page条件と2pages条件の順序は参加者内で入れ替え、6作品の提示順序もランダムにしてあります。