「バレエがこんな世界だったなんて」 谷桃子バレエ団の密着動画「賛否の嵐」とその先 “ガチの密着”で映像ディレクターも自問自答
華やかなバレエの世界、その裏にある過酷な実態を、YouTubeで公開したのが老舗の「谷桃子バレエ団」。バレリーナに憧れる人は多くとも、「バレエだけで食べていける人はほとんどいない」という現実を知ったらどうでしょうか。そんな知られざる世界を赤裸々に映した動画は大きな反響を呼び、賛否両論を巻き起こしています。撮影を始めるまでバレエのことをよく知らなかった、という映像ディレクター・渡邊永人氏が感じたこととは? (本記事は渡邊氏の著書『崖っぷちの老舗バレエ団に密着取材したらヤバかった』より一部を抜粋・再編集したものです)。 【画像】「給料制にできませんか?」華やかな世界に見えるバレエ界のリアルに切り込んだ動画で話題に
前記事:「老舗バレエ団が動画配信、華やかさの裏の“現実”」 ■賛否両論のコメントがあふれ返って 2023年7月。配信開始から1カ月。 この頃には、配信した動画の数は15本を超え、ほとんどの動画が10万回以上再生された。 順調すぎるほどの結果が出ていた。 「バレエがこんな世界だったなんて知らなかった」 「お金の面でこんな苦労があるなんて驚いた」 「歌舞伎とかの伝統芸能同様、バレエも大変なんだな」 バレエファンだけが観ていたチャンネルから様変わりして、僕と同じようなバレエをまったく知らない人がたくさん動画を見てYouTubeのコメント欄に感想をくれた。
その一方で動画に対して心配する意見も多く寄せられた。 「こんなに裏側を晒して大丈夫なのか?」 「苦労する姿を見たら、本番での舞台を楽しめなくなる」 「一体これを動画で公開して何の意味があるのか?」 「もっとバレエに詳しい人に撮影させた方が良い」 今の時代、自分の身分を明かすことなくネット上に意見を書き込める。だからそこでの声は容赦がない。好感や興味を表すポジティブなコメントがある一方で、心配や不安、時には批判や中傷にも近いネガティブなコメントも寄せられた。
■ネガティブなコメントもありがたい? しかし僕自身はまったく気にしていなかった。耐性があったのだ。 バレエ団のチャンネルを始める前にやっていた、女性インフルエンサーの夜のお店をオープンするまでの密着ドキュメンタリー。これには、今回と比べものにならない数の批判が来ていた。 「女性を食い物にするな!」 「詐欺師だ!」 「こんな卑猥なものを載せて、子どもが見たらどうするんだ!」 などなど。 念のために言及するが、実際には卑猥な動画はアップしていない。女性の夜の仕事をリアルに映し、そこで働く人たちの表には見えない苦労や努力を描きたかっただけだ。