PM2.5などの大気汚染による肺がんの割合が世界で増加、台湾では患者の3分の2が「非喫煙」
検診の普及、広く呼びかけ
こうした結果を踏まえ、2022年7月、台湾全土で検診プログラムが始まった。多量の喫煙歴がある人と、本人に喫煙歴はなくても肺がんになった家族がいる人を対象としている。 ライ・シュンチンさんは肺がん患者だ。そして彼女の夫、息子、娘も肺がんにかかっている。家族のなかで唯一の喫煙者だった夫が、胸の締め付け感と咳の症状を訴え、最初に肺がんと診断された。発見されたときにはステージIVで、手術もできなかった。しかし、それをきっかけに家族全員が検診を受け、いずれもステージIまたはIIであることがわかった。「3人とも林教授の手術を受けました」とライさんは言う。 ライさんの息子も、「できるだけ多くの人に検診を受けるよう勧めています」と話す。「親戚や友人にも、がんがあるなら早めに発見できるようにと願っています」 台湾当局も、早期発見によって命が救われるだけでなく、治療費も抑えられることを認識し、検診を重視している。 「公的健康保険は、肺がん患者の治療に多くの資金を費やしていました。それでも結果は芳しくなく、多くの患者が亡くなっていました」と、楊氏は言う。 そのため台湾では、陳建仁元副総統をはじめとする肺がん患者がテレビ、ラジオ、新聞を通じて大々的に検診を呼び掛けている。病院も電話を掛けたり、パンフレットを配布したりして周知に努めていくと、国立台湾大学がんセンターの検診担当責任者を務めるチウ・チンミン氏は言う。また台湾当局は、がん治療の診療報酬を病院の検診プログラムの成果と連動させている。
文=Simar Bajaj/訳=荒井ハンナ