人間が集中できる時間はたったの5分!? 仕事がデキる人の集中力の秘訣とは?
「集中」とは必要最小限の回路だけを使っている状態
さて、ここでさらなる解決方法を紹介したいと思います。そのために、集中している状態とはどういう状態なのか? 脳はどんな風になっているのか、記しておきたいと思います。 例えば、100ます計算のような課題を3分やる場合を想像してください。3分やって20秒間休みます。その繰り返し。 そのときの脳活動を調べると、最初の1、2セットは計算や一時的な記憶に関連する前頭葉や頭頂葉が極めて強く活性化します。しかし、4セット、5セット目ともなってくると、脳活動は安静時とあまり変わらない、フラットな状態になっていきます。沈静化していきます。 その一方で、パフォーマンスは上がっていく。点数はよくなり、数がこなせるようになります。つまり、いい集中状態とは不要な脳活動がなくなっている状態、必要最小限の脳ネットワークだけが効率的に活動している状態です。 ほかのものでたとえるならば、高速道路に入る車です。最初は一気に加速しなければならないけれど、ある程度の速度に達したら、後はオートクルーズで楽に進める。無駄なアクセルやブレーキを使うことなく、一定の高速移動を勝手に維持している状態。それこそが集中した状態です。 そして、その状態に入るのがうまい人を“集中力がある”と言うのでしょう。それは決して脳活動が活発である状態が持続するのではなく、必要最小限の回路だけを使うべく全体は沈静化している状態であるということなのです。 とすれば、“集中できない”という人はその状態になかなか入れない人ということになります。 先ほどの高速道路の例で言えば、アクセルを踏んで、一定の速度まで上げたいのだけれど、横を走っている車やバイクやトラックが気になって、ついついアクセルを離してしまったり、ブレーキを踏んでしまったり。そのうちアクセルやブレーキを踏み疲れてパーキングに寄って休んでしまう。いつまで経っても目的地に着かない……。 脳が沈静化してハイパフォーマンスな状態になれば、余計な回路が働かないので周りに気を取られないで済む。なのに、そこに行くまでの間で気が散ってしまうと、何かと周りが気になる。 あれこれ気になって集中できない状態では、目に映るものをみな処理しようとし、耳に入る音に即刻反応しようとする。これは最初に書いたように、生き物としては正しい傾向なのですが、デスクワークでは邪魔になることが多い。 それなら直そうと考えがちですが、こういうのは遺伝的な側面のある、持って生まれた気質なので、直すより付き合っていく方向で考えた方が断然効果的です。 ものや音に反応してしまうのを防ぐには、単純には遮断すればよく、仕事場であればパーティションで区切るとか、なければ書類を積んでパーティションのようなものを作ってみましょう。そして机の上にある余計なものを片付けて、視覚からできるだけものを排除する。また、聴覚を遮断するには耳栓でもいいですし、イヤホーンを付けて音楽を聴くというのも手です。
TEXT=篠原菊紀