子どもが就職に失敗、大学院に進むと希望。遺産としてお金を遺すより、学費として先渡しするほうが有意義
スピリチュアリストとして、さまざまな角度から読者のお悩みに答え、生きる指針を示してくれる江原啓之さん。現在は熱海に在住し、ていねいな暮らしをしながら日々「生きる上で大切なこと」を発信し続けています。『婦人公論』のリニューアルにあたって始まった新連載「〈幸せぐせ〉を身に着けよう」。第35回は「息子が希望通り就職できず引きこもりに。「やっぱり大学院に進みたい」と言い出した」です。 * * * * * * * Q 息子が希望通り就職できず引きこもりに。「やっぱり大学院に進みたい」と言い出した A)子どもの意向を聞き入れ、学費を出す B)進学するなら、学費は自分で工面するよう伝える ◆自立してくれると思った矢先の顛末 落ち込んで引きこもりになるくらい入りたい会社だったのでしょうけれど、こればかりは仕方ありません。いくら人手不足の売り手市場であっても、必ず希望が叶うわけではないのが現実です。ただ、落胆しつつも息子さんは、自分の進路についてしっかり考え、大学院へ進学したいという答えを出しました。親としては、ようやく自立してくれると思った矢先に、さらなる学費がかかるとは思いもよらなかった顛末なのかもしれません。もちろん経済的な余裕がなく、学費を出せなければ断るしかありませんが、今回は出してあげられる経済力があるという前提でお考えください。このような場合、どう答えるでしょうか。
◆未来に希望がない時代 幸せぐせの答えは、Aの学費を出す、です。Bを選んだ方は、大学まで行かせているし、就職がダメだったから進学なんて逃げている。すでに成人しているのだからその先は自分でなんとかしなさい、という気持ちがあるかもしれません。そういう意味で言えば、Aは親として甘いと感じるでしょう。しかし今の時代を考えると、そのぐらいの甘さは仕方ないとも言えるのです。 昨今、未来に希望が持てない、なんの楽しみもないと感じている若者がとても多いと聞きます。実際、日本の経済は上向いているとは思えません。 そんな時代を生きる若者世代に大人世代が言えるのは、「あらゆる知識を備えて、道を切り拓いてほしい」ということではないでしょうか。社会に出る前の子どもを守ってやれるのは親しかいません。今回のように大学院での勉強ならば、知識を深めることになりますし、先々の助けになるかもしれません。就職先の幅が広がるという場合もあるでしょう。 この連載では、たびたび相続問題について取り上げていますが、子どもに遺産としてお金を遺すよりも、このように学費として先渡しするほうがずっと有意義だと思います。例えば、子どもの将来の結婚資金として貯めていたお金を、学費として使ってもいいでしょう。そして、子どもにはそれがどんなお金なのかも伝えるのです。「あなたが結婚するときのために、少しずつ貯めていたお金を大学院の学費に充てるよ。結婚するときはそのお金はないと思ってね」と。子どもは、親が自分のためにお金を貯めていてくれたことに感謝するでしょうし、以降は親の金銭的サポートはないことも理解するでしょう。いずれにせよ、それが大事なお金であり、大学院でしっかり勉強しなければならないと覚悟もするはずです。 「なんでも希望を叶えてあげる」という態度より、たとえウソでも方便。「貯めていたお金なんだよ」と言って、子どもに覚悟させるのも親の務めです。