イチローにもあった過去…大谷翔平が通算100号記念にマドン監督からプレゼントされたM.C.ハマーのサインボールの謎とは?
少し長い話になったが、そんな経緯をもちろんマドン監督は知っていて、カブス時代から彼を支えているアシスタントのティム・バスが、「オークランドなんだから、M.C.ハマーのサインボールを記念に渡そう」と提案したとき、それに乗った。 タルバンによれば、「もちろん、そんなものがあるはずはない」とのこと。よって、彼は、大谷がそれを監督から受け取るのを見ながら笑いを噛み殺したが、「その辺に転がっている可能性はある」。裏を知っていれば、本物だと信じてもおかしくなく、マドン監督とバスは、絶妙なところを攻めたのだが、ひとつの誤算があった。 大谷が、M.C.ハマーとアスレチックスの関係を知らなかったのである。そもそも彼は、ブーム終焉の後に生まれた。よって、M.C.ハマーのサインボールをどうするのか? と聞かれた大谷は、「偽物らしいので」と戸惑いを口にしただけ。 喜んだところで、「いや、実は」というのがイタズラのパターンだが、マドン監督らは、前提を読み違えた。 大谷に一泡吹かせたいと思っていたコーチやチームメートも肩透かしを食らった。実はこのところ、大谷がコーチらに散々イタズラを仕掛けているという。先日発売された「スポーツ・イラストレイテッド」誌にもその様子が描かれていた。 ある日、投手コーチ補佐のドム・チティがトレーニングルームに行くと、そこにいた大谷の方から、「危ない!」という声と一緒に、シルバーのボールが飛んできた。重いボールかと思って身構えたら、軽いボールだったという。 そんなことが続いていたので、なんとか大谷をと、コーチらもチャンスをうかがっていたようだが、M.C.ハマーを知らないのでは、何も成立しなかった。 大谷は「大事にはしたいなと思います。いい記念に」と話した。 いつかそのボールを見たとき、監督らのきょとんとした表情が思い浮かぶのかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)