大谷翔平の“新魔球”正体をデータ検証…判明した投球術とは?
エンゼルスの大谷翔平(27)がアストロズ戦(20日、日本時間21日)で見せたピッチングは圧巻だった。6回1死までパーフェクトピッチング。曲がりの大きなスライダーが効果的で、翌日には「新魔球」、「新スライダー」といった言葉がネット上に躍った。その投球内容を検証してみた。 確かに、横の変化量は大きいもので60センチ近い。変化量をプロットしたものが図1である。 変化量とは、重力のみの影響を受ける無回転の球が、ホームベース上で真ん中に到達する点を基準とする。実際の球は、仮にリリースポイント、球速などが全く同じだとしても回転がかかっているので、そこに達するわけではない。基準点との差が変化量ということになる。 次に図2を見てほしい。こちらは昨年大谷が投げた全球の変化量をプロットしたものだ。 両図を比較すると、昨年も同様に変化量の大きなスライダーを投げていることが分かる。また、アストロズとの開幕戦でも、横の変化量が50センチを超えるスライダーを投げていた。なぜ20日のアストロズ戦だけあれだけ変化量がフォーカスされたのか分からないが、残念ながら、「新魔球」でも「新スライダー」でもない。
スライダー自体、開幕戦でも有効だった。あの試合ではスライダーを22球(28%)投げ、相手が9回振ってきたが、7回(78%)も空振りを奪っている。20日のアストロズ戦では35球(43%)を投げ、相手が15回振ってきて、空振りは11回(73%)だった。 アストロズにしてみれば、2戦続けて同じようなパターンでやられたことになり、そのことのほうがむしろ不可解だったが、裏には巧みに伏線が張られ、それが効果的だったとも言える。 その伏線とは何か。ある意味、ケガの功名ではなかったか。というのも実は、開幕戦ではスプリットがまるで使えなかったが、逆にそれを利用した面がある。 大谷もスプリットについて「何球かいいのはありましたけど、基本的にはあまり良くなかった」と試合後に明かしている。 「スライダーと真っ直ぐが、基本良くて、カーブも良かったので多投しましたけど、スプリットに関しては、すこしバラけていた」 大谷が過去、2ストライクと追い込んでからスプリットを投げる確率は約40%。開幕戦では2ストライクから21球を投げたが、スプリットはわずか4球。しかも、2回以降は1球だけ。その1球がタイムリーとなり、あの日大谷が許した唯一の失点となった。 決め球として代用したのがスライダーだったが、相手の頭にはスプリットがあるため、面白いように決まった。