大腸がんや肝臓がんのリスクが「禁酒」で大きく減少
お酒を大量に飲む人が、飲酒量を大幅に減らしたり禁酒したりすると、飲酒に関係するがん(肝臓がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、大腸がん、女性の乳がん)の発症リスクが大きく低下することが、フランスで行われた研究(*1)で分かりました。 【関連画像】表1 アルコールリハビリまたは禁酒歴がある人の、飲酒関連がん発症リスクの低下 ●世界のがん発症者の4.1%が飲酒関連のがん 飲酒ががんの危険因子であることは明らかで、2020年には世界のがん発症者の4.1%が肝臓がんや大腸がんなどの飲酒関連のがんと診断されていました。一方で、飲酒量を大幅に減らす、または、禁酒することによってがんリスクが低下するかどうかについては、これまで十分に検討されていませんでした。 そこでフランスの研究者たちは、同国のアルコール依存症患者を対象に、禁酒のための治療を受けることによって飲酒に関連するがんの発症リスクがどれくらい下がるかを調べることにしました。 フランスではアルコール依存症の問題が深刻化しており、対策の一つとして、入院して依存症治療を受けるアルコールリハビリテーションプログラムが提供されています。慎重な監視を受けながら、薬剤の助けを借りて禁断症状を乗り切り、続いて飲酒渇望を抑える薬剤を服用しながら心理療法を受けて、完全な禁酒を目指す、といった治療が行われます。 今回著者らは、2018年1月1日から2021年12月31日までの期間にフランス国内の医療機関に入院し、退院したすべての患者の情報の中から、過去5年間にがんと診断されていなかった人たちと、アルコール依存症と診断されていた人たちの情報を選出しました。アルコール依存症の患者を、「治療歴がある患者(病院でのアルコールリハビリ歴がある、または、禁酒歴が記録されていた患者)」と、「治療歴がなく、アルコール依存状態が持続していたと考えられる患者」に分けて、飲酒関連がんの診断の有無を調べました。飲酒関連がんは、肝臓がん(肝細胞がん)、口腔がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、食道がん、大腸がん、女性の乳がんとしました。 飲酒以外のがんの危険因子(喫煙、肥満、ヒトパピローマウイルス〔HPV〕感染、B型またはC型肝炎ウイルス感染など)を考慮した上で、治療歴がある患者と治療歴がない患者の飲酒関連がんの発症リスクを、男女別に推定しました。