中国の電池大手が「発火対策の強化」を訴える事情 韓国のEV火災事故を受け、イメージ低下を警戒
韓国で発生したEV(電気自動車)の火災事故をきっかけに、中国の大手電池メーカーから車載電池の安全対策強化を訴える声が上がっている。 【写真】韓国で自然発火したメルセデス・ベンツ製のEVは、中国の孚能科技製の車載電池を搭載していた。 問題の事故は8月1日、韓国・仁川(インチョン)市のマンションの地下駐車場で起きた。そこに駐車されていたドイツのメルセデス・ベンツ製のEVが自然発火し、周囲のクルマに次々に引火。100台以上が全焼または一部焼損し、煙を吸った20人以上の住民が入院する大惨事になった。 その1カ月後の9月1日、中国・四川省で開催された電池業界のフォーラム「世界動力電池大会」では、有力メーカーの幹部から韓国の事故を意識した発言が相次いだ。
■CATLトップが強い危機感 「EVのサプライチェーンを担う企業は、技術革新と品質管理を通じてさまざまな問題を解決しなければならない。中でも熟慮を要するのが、EVの安全性にかかわる一部の(想定を超えた)極端な事故にどう対処するかだ」 中国のEV最大手、比亜迪(BYD)の傘下にある弗迪電池(フィンドリームス・バッテリー)の孫華軍CTO(最高技術責任者)は、フォーラムの壇上でそう指摘した。 「中国のEVおよびPHV(プラグインハイブリッド車)の保有台数はすでに2500万台に達し、新車販売台数に占める比率が5割を超えた。安全性にかかわる問題を解決しなければ、いずれ破滅的な結果を招きかねない」
そう強い危機感を示したのは、電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の曾毓群・董事長(会長に相当)だ。同氏は電池業界が競争をいったん棚上げし、車載電池の安全性を一致協力して高め、絶対的な安全基準を確立すべきだと提案した。 韓国での火災事故は、EV関連業界だけでなく一般市民にも強いショックと不安を与えた。韓国政府は自動車メーカーに対して車載電池のサプライヤーに関する情報開示を求めたほか、一定量以上の電池を搭載したEVの地下駐車場への進入制限まで検討したほどだ。