”ドンキの焼きいも”が海外で大ヒットの理由とは?「情熱価格」やローカライズなど、ドン・キホーテが仕掛ける型破りな戦略を経営の重要人物たちが語る【書評】
■「焼きいも」が意外なヒット商品になった海外店舗
国内の都市部や郊外における認知度は、もはや言わずもがなだ。しかし、海外でも現地流にアレンジした独特の店内レイアウトで客の心をつかむ。 小売り業界などへの取材経験が豊富で、現在は日経BPロンドン支局長を務める酒井大輔氏の『進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営』では、2017年12月にシンガポールでオープンした海外店舗「DON DON DONKI」1号店を取り上げている。 >引用(p34~35) 並んでいるのは現地の商品ではなく日本の商品で、コンセプトは「ジャパンブランド・スペシャリティストア」だ。さかのぼれば、2015年。当時、PPIHの創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏がシンガポールへ移住した際、現地の日本食品があまりに高く「憤り」をおぼえたのが、オープンのきっかけだったとは驚いた。 また、現地でのヒット商品が「焼きいも」であるのも意外で、「わずか1日で3000本」も売り上げるほどのブームに。今では、社内資格「焼き芋マイスター」もできるほどの「キラーコンテンツ」になったという。 離島にも店舗があり、沖縄県の宮古島や石垣島では「シュノーケルセットといったマリングッズ」などもラインナップしているといい、やはり「型破り」というべきか、本書を通して分かる「ドン・キホーテ」の底の深さには、感心せざるをえない。 ふと、頭に浮かぶ“あのメロディ”も耳に残る「ドン・キホーテ」は、消費者として“異色”なお店の印象も強い。しかし、そこにはたしかに人がいて、確固たる戦略がある。紹介した2冊で内情を窺い知ると、店舗への愛着も不思議と強くなってしまう。 文=カネコシュウヘイ