危なかった…賃貸マンションを経営する70代母が「3億円」騙し取られかけたワケ。「相続対策」で待ち構える、悪徳不動産会社の功名なワナ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
不動産コンサルと税理士が出した「解決手段」
真田は、所属する税理士の里見と打ち合わせを行った。 依頼者の抱える悩みを総合的に解決する手段として、松田家の資産管理会社を設立することを軸とすることに。 また、法定相続人は長女および次女であるが、長女の相続を考えると(このままであれば)法定相続人は次女であることから、自ずと次女一家に資産が承継されていく。したがって「松田」の名前が消えてしまう。したがって、資産管理会社の社名に「松田」を残す方針を立てた。 資産管理会社の設立および建物の法人化により以下の点はクリアできそうである。 ・納税資金の確保≒不動産を残すこと ・長女を社員とすることによる将来的な収入の安定 ・松田姓を(社名に)残すこと……ex)株式会社松田 など 残す課題として、老朽化の問題があったが調査の結果、定例の修繕のみで当面は利用可能であることが判明しその旨説明をすることにした。また、将来的な建替えに備えて資産管理会社内で内部留保することも事業計画に織り込んだ。
「買付証明書」の発行元の正体
真田と里見は依頼者である松田香織宅へ訪問した。 資産管理会社を設立することで多くの課題が解消できることを説明した。また法人名に「松田」を残すことで、ご主人の思いも繋いでいく提案を行った。建物についても適切な維持管理がなされてきていることからこのまま暫くは使えることを伝えた。 最後に、真田から売却について重要なことを説明した。真田が当該不動産を評価したところ対象不動産の価格は8億円であり、不動産業者が提示した5億円はかなり相場よりも低い水準であることがわかった。 昨今、対象不動産の存する最寄り駅の周辺では、再開発組合が設立されるなど、今後発展していく傾向を示しており将来的な利便性向上(≒不動産価格の上昇)を睨んで積極的に不動産購入する不動産業者が増えており、結果として不動産価格が徐々に上昇してきている。 また、当面その傾向は続きそうであり転売を目的とした売買も盛んにおこなわれていることが判明した。 セミナーを開催した不動産会社もその点に目を付けており、周辺にチラシをまき不動産オーナーから安く購入することを狙っていたことが窺える。 さらに、買主として買付証明書を発行していた会社は真田が調べた結果、実はセミナーを開催した不動産業者と同一グループであり、苦労して買付証明書を取得したというのは「まったくのデマ」であることが推測された。 依頼者は、ずっと感じていた違和感の正体が判明し安堵した一方で、不動産の知識に乏しい高齢者を狙い、あたかもいい条件であるように誤認をさせるような営業手法に憤りを覚えた。 また、長女が買付証明書を見かけなければ、場合によってはそのまま売却をしていた可能性もあったことから、日ごろから家族と情報を共有しておくことや、専門家の意見を聞くことの重要性を感じた。
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