危なかった…賃貸マンションを経営する70代母が「3億円」騙し取られかけたワケ。「相続対策」で待ち構える、悪徳不動産会社の功名なワナ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
家族へ相談、理解を得る
今回の一件をふまえて、真田からの助言もあり松田香織は自分1人で抱え込まずに家族と相談をしながら対策を進めていくことを決めた。会議には、長女、次女、次女の夫、そのほかに真田と里見が加わった。 香織から、相続の不安に付け込まれ、危うく不動産を売却することであったこと。たまたま長女が書類を見かけて冷静になれたこと。真田らから相続対策の提案などを受けて、客観的かつ冷静に進めることを決めたこと。年齢的にも、1人で対処していくことは難しいので娘2人にも協力を仰ぎたいこと、などを説明した。 その後、真田と里見から承継について策定した内容を説明した。 おおむね2時間にわたり、資産管理会社を設立して「松田」姓を法人名として残すこと。建物については法人化し、将来の修繕や建替え、相続税納税資金にかかる費用に充てるため計画的に内部留保していくこと。 不動産は1つであり、相続によりわけることは困難(共有の場合、親族内で最も揉めやすい要因となるため)であることから、法人化からの給与にて平等になるように支払いを行うこと。 現状において納税資金は不足する可能性があるが、個人から建物分の相続資産が減少する点や、無償返還の届出により土地評価も一定額引き下がること、小規模宅地等の特例の適用もできることなどを説明し、香織氏の資産の増加を抑制していく方向性を示し、参加者の理解を得た。 不明点がないか確認したところ、株主についてはどのように承継していくべきかとの質問が長女からあった。株については当初は香織氏にすべて持ってもらうこと、かつ代表者としても事業にあたってもらうことを説明した。 その後、株式も相続財産となることから長期的な承継を勘案して、どこかのタイミングで次女一族の誰かに渡していく方向性であることを伝えた。もしかしたら長女は、次女一族に多く資産が承継されることに不満を感じているのかもしれないと真田は思った。
【関連記事】
- 年収 2,000 万円の営業部長、住宅ローン審査で撃沈「申し上げにくいのですが、貸せません」不動産営業マンが指摘した〈まさかの理由〉
- 銀行「無事、融資が通ります」…年収1,000万円超の43歳課長、“2億円”の物件で始めた〈不動産投資〉の悲惨な末路【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
- 「相続税を抑えられます」節税として不動産投資を勧められた45歳社長…昇格目前の8年目銀行員を怒鳴りつけたワケ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
- 退職金で〈毎月分配型〉投資信託を買った63歳・元大企業部長…“ゴルフ三昧”で過ごした1年半後、若手銀行員を怒鳴りつけたワケ
- 調査官の思うツボ…税務調査「トイレを貸してください」の真意