危なかった…賃貸マンションを経営する70代母が「3億円」騙し取られかけたワケ。「相続対策」で待ち構える、悪徳不動産会社の功名なワナ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
相続セミナーで、不動産会社と「個別面談」を約束
チラシの地図で会場を確認しながら最寄り駅から20分ほどのターミナル駅まで電車で向かった。「相続セミナー」の会場に到着すると同年代か少し年上の参加者が20名ほど着席していた。 セミナーの内容としては2部構成となっており、税理士から前半で最近の相続税のトレンド、税改正により基礎控除が減額されたことや、相続申告者数が増えていることなど相続を取り巻く環境の説明があった。 後半では、主催の不動産会社の担当者からコロナが落ち着いてから不動産市況が非常に活況になっており、都市部のマンションが1億円を超えるような取引で成立しているというような話をしていた。 2時間程度のセミナーを終え、帰り際に不動産会社の担当者から名刺を受け取り、後日個別面談の約束をしたうえで帰路に着いた。
不動産会社「このままでは、娘2人が必ず揉めます」
不動産会社の担当から連絡があり面談の予約をした。不動産会社の事務所へ訪問のうえ、相続について個別に話をすることとなった。 不動産会社の担当からは、相続の対策を進めるにあたって家族構成を教えて欲しい、とのことであったのでひととおり現状について伝えた。 担当からの提案をまとめると、相続においては子供たちの法定相続割合は平等であり、松田さんが所有している不動産はひとつしかないことから間違いなく姉妹間で揉めること、さらには不動産価格が高いいまのうちに売却のうえ、現金化しておかないとあとで後悔する、との内容であった。 気持ちとしては、娘2人に平等にわけたいとの気持ちもあったことから、「それも選択肢のひとつではあるか」と担当にいわれるがまま査定依頼書にサインをすることにした。 その後、1週間ほどで担当から「いい買い先が見つかったので、すぐにでもご説明したい」との連絡が入った。特に売却する意思表示をした訳ではないので、一方的に進められている感じがして違和感を覚えたが、とりあえず会って話を聞くことにした。 面談早々に担当から「買付証明書」なる書面の提示をうけ、 「非常にいい条件で買主が見つかりました。松田さんのお持ちの不動産は建物が古いことから、通常であれば土地価格から解体費用を引いた程度が妥当な価格かと思いますが、私の知り合いの不動産業者では建物価格も評価したうえで5億円まで数字を伸ばしてくれました。しかも、私のほうで明確に意思表示をするよう説得をして書面で提示させました」 と購入希望価格について説明をしたのち「このような条件はまず出ないので、近日中に売買契約まで取り交わしましょう」と、急かすように話を持ち掛けてきた。 松田香織は「いろいろと短期間で活動していただいたのは感謝します。とはいえ、この建物には自宅もあるので、急に結論を出すことはできません。一度持ち帰って検討させてください」と伝え、話を終えることにした。 担当からは「買付証明書の期限は1ヵ月なので早めに結論を出してください」と伝えられ、不動産会社をあとにした。
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