650万年前の金星からの来訪者とは何者? 涼を求めて京都の魔界・鞍馬山へ
京都市の北部、左京区の鞍馬というところがあります。年輩の人ならこの地名を聞くと、名優・嵐寛寿郎扮する時代劇「鞍馬天狗」を思い出すでしょうし、歴史好きな人なら幼い頃にこの鞍馬山で過ごした遮那王(牛若丸=義経)に想いを馳せることでしょう。そして、最近鞍馬は京都でも有数のパワースポットとして人気が出るようになりました。 JR東海のシリーズCMに「そうだ京都、行こう」というのがあります。1993年から、かれこれ四半世紀近くにわたって続いているCMキャンペーンなので、どなたも一度や二度は目にしたことがあると思いますが、その中でこの鞍馬が取り上げられたことがあります。1998年に作られたポスターですが、そのコピーが実に秀逸でした。「650万年前、金星よりの使者、この地に立つ。800年前、義経、天狗と出会う」という何とも不思議なフレーズに心を惹かれたものです。
650万年前の金星からの使者とは? 鞍馬山の大天狗とは?
650万年前の金星からの使者とは何者なのか? ここ、鞍馬にある鞍馬寺には「尊天」と呼ばれている、「毘沙門天王」、「千手観音菩薩」、「護法魔王尊」の三身一体の本尊があります。この中のひとつである「護法魔王尊」がどうやら金星からの使者らしいのです。ヒンズー教の神話に登場するサナート・クマラという神がいます。宗教において神と結びついた知識や認識を研究する神智学という分野がありますが、近代神智学においてはこのサマート・クマラが金星からやってきた霊的指導者とされています。 そうした神智学の思想が日本において影響を及ぼしたのでしょうか、護法魔王尊というのはこのサナート・クマラのことだとされています。そもそも魔王という名前からしておどろおどろしいですが、650万年前に金星からやってきたというのも何やらファンタジーの世界を想起させるものがあります。実際にこの護法魔王尊像の写真を見ると、背中に羽根をもち、長いひげをたくわえた仙人のような姿で、鼻が高いのがわかります。鞍馬と言うと天狗伝説でも有名ですが、まさに護法魔王尊は我々がイメージする天狗に近い風貌です。一説には天狗はもともとこの護法魔王尊であったとも言われています。