腎臓の病気で逝った愛猫との別れが開発のきっかけ…「用の美」息づく猫用食器「キャットボウル」 窯猫たちも協力して完成
用の美を体現した器を
こだわったのは、高さ、機能性(猫が食べやすい、人が持ちやすい、洗いやすいなどの使いやすさ)、デザインの3点です。まず高さですが、猫の場合、口、食道、胃がまっすぐに繋がっています。獣医師さんに聞いたりいろいろ調べたところ、床に皿を置いて、首を下げたまま食事すると、食べ物は食道を上向きに通って胃まで運ばれますが、器に高さをつければ、食べ物が口→食道→胃へとまっすぐに運ばれ、負担が少なくて済むとのこと。 5~8センチほどの高さの器はたくさん売っていますが、それでは低いと感じました。もちろん猫によって個体差や、最も適切な高さがあると思うので、必ずしもこれがいいというわけではありませんが、いろいろ試した結果、体高(四つ足がついた状態で立った時の地面から背中までの高さ)22センチ以上の成猫の場合、前かがみにならずに食べられる高さは15~16センチくらいに落ち着きました。 また、前かがみの姿勢は足の関節に負担がかかり、特にシニア猫は筋力が低下しているため、高さのある器の方が楽だそうです。皿の部分は、食べているときヒゲが器に当たるとストレスになるとのことで、顔より一回り大きい直径15~16センチにし、フードがこぼれにくいよう深さは4センチにしました。 それと器を床に置いたとき、その空間を彩り、雑な気分にならないものをと心がけました。私は、イギリスの陶芸家・バーナード・リーチ氏の「触れたその手にぬくもりはあるか。触れたその唇に喜びはあるか」という言葉を大切にしています。ただ使いやすいというだけでなく、手にしたときの感触がしっくりとなじんだり、心の豊かさを感じられたりするものを作りたいと思っています。この器も、そうした用の美を体現したつもりです。 窯の看板猫、空(クウ)とチャチャには、試作品を作るたびに試してもらいました。本当に食べやすいか、課題はないかなど、おおいに協力してもらったんですよ(笑)